CO2回収事業がカナダで本格稼働
世界各地の発電所で20数件のCCS事業が試験的に稼動中で、アメリカでは既存の3カ所に加え、ミシシッピ州とテキサス州で新施設の建設が進んでいる。しかし計画の遅れやコスト超過で、これらの事業のほとんどが苦戦を強いられている。
エネルギー企業や政府は化石燃料を燃やし続けるためにCCSに多額の予算を投入しているが、再生可能エネルギー開発に注力するほうが賢明だという声もある。
CCSはエネルギー効率の改善や再生可能エネルギー開発に投入すべき「重要な資金の無駄遣い」になると、自然保護団体シエラクラブのカナダ支部の責任者ジョン・ベネットは批判する。「化石燃料からの脱皮にはつながらない。化石燃料は使用を減らすだけではなく、『脱・化石燃料』の技術開発を進めるべきだ」
一方、米科学者団体「憂慮する科学者同盟」は、電力部門のCO2排出を削減する技術の1つとして、CCSの有効性を認めている。しかし、最近発表した報告書では、CCSに大きく依存した削減策は長期的には「エネルギー効率改善と再生可能エネルギー利用を柱とする削減策よりも高くつく」と結論づけている。
バウンダリーダム事業が実績を上げれば、こうした批判も収まると推進派は期待する。「バウンダリ―ダムは批判派への反証となる」と、イギリス最大のCCS研究機関スコティッシュ・カーボン・キャプチャー&ストレージのスチュアート・ヘーゼルダイン所長は言う。「補助金なしでも本格的な商業稼働が可能となれば、世界中で導入に拍車がかかるだろう」