最新記事

リベリア

エボラ対策を邪魔する根強い無知と不信

2014年8月28日(木)15時32分
チャド・マコーディック

 西アフリカのラジオでヒットしている啓発目的の曲もいくつかある。リベリアの「エボラ・イン・タウン」がその筆頭だ。だが最も効果的な啓発方法は人々に直接語り掛けることだと、スアフィアトゥ・チュニスは指摘する。彼女はシエラレオネの首都フリータウンを拠点に、全国各地で予防教育を行っている。

 チュニスは流行が初期段階だった4月に、リベリアとギニアの国境付近の村で活動を始めた。「エボラ出血熱は、看病する家族に移る『家族病』と呼ばれる。故郷の村にいる家族のことが心配で、まずは家族の啓蒙から始めた。この辺りでは親戚が3カ国にまたがって暮らしている」

 フリータウンで同志を募り、ユニセフ(国連児童基金)や保健衛生省の研修を受け、活動に打ち込んできた。最近も、初の患者が確認されて間もない南部ボンテから帰ってきたところだ。

 外部から見ると、シエラレオネは秘密主義で因襲的な社会と言っていい。人々の思考を変えることは難しいため、チュニスは祈?師や心霊治療家にも協力してもらう。彼らの権威を借りて、啓発活動を浸透させるのだ。

 流れは変わったと、チュニスは見ている。「みんな何をすべきか理解し始めた。だから病気について過剰な報道はやめてほしい。それより私たちには助けが必要だ。国民に病気の汚名を着せても助けにはならない」

(筆者は米NPOワン・ビレッジ・パートナーズの活動家)

[2014年9月 2日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中