最新記事

東南アジア

タイ軍政の世論懐柔は 「幸福」が売り

W杯の視聴無料化や「幸福祭」開催などバラまき作戦で国民の機嫌を取る軍政の必死

2014年6月27日(金)12時51分
モン・パラティーノ

ハッピー! デモ警戒中に愛国歌を熱唱する兵士(バンコク) Erik De Castro-Reuters

 タイ国軍によるクーデターから1カ月。軍政に対する不満がくすぶるなか、国民に幸福を取り戻すべく、軍政が世論懐柔の「ばらまき作戦」を開始した。

 まず目につくのはサッカーW杯ブラジル大会の全試合を地上波無料放送に変更したこと。飲食店でテレビ観戦するファンや観光客のことを考え、夜間外出禁止令もすべて解除した。

 首都バンコクの戦勝記念塔など、抗議デモがあった場所では「幸福」祭を開催。兵士が市民に無料で食べ物、散髪やマッサージ、健康診断を提供した。軍楽隊のコンサートも行われた。

 16世紀タイの名君主ナレスワン王についての映画を無料上映したのは、愛国心を育てるためだろう。また庶民の懐が痛まないようにと、バンコクでは鉄道料金の値上げが延期された。

 極め付きは軍事政権を率いるプラユット・チャンオーチャー陸軍司令官が作詞したバラード「舞い戻れ幸福よ、タイに」。秩序回復と国民の幸福を追求する熱意を歌い上げ、テレビやYouTubeで人気になっている。

 一方、米映画をまねて、軍事政権への抗議の意味を込めた「3本指運動」は違法とされた。プラユットは、代わりに5本指を立てよ──2本は国家のため、3本は信仰・君主制・民衆のために、と主張している。

 当局は軍政に批判的な人々を多数召喚しているが、エアコンといい食事を与えているから身柄拘束には当たらないとも主張。自由を奪われても、軍に快適さを守ってもらえれば人々は「幸福」だと言いたいらしい。

[2014年7月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ダウ・S&P日中最高値更新、トランプ氏の財務長官指

ビジネス

S&P500の25年見通し6600に引き上げ=バー

ワールド

イスラエル、ヒズボラ停戦承認巡り26日閣議 合意間

ワールド

独社民党、ショルツ氏を首相候補指名 全会一致で決定
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 3
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 4
    テイラー・スウィフトの脚は、なぜあんなに光ってい…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 7
    日本株は次の「起爆剤」8兆円の行方に関心...エヌビ…
  • 8
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 9
    またトランプへの過小評価...アメリカ世論調査の解け…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中