「進撃の極右」が映し出すもの
バルスはテレビ番組に出演して、国民戦線の大躍進に絡めてフランスが「アイデンティティーの危機」に陥りつつあることを認めた。しかし、経済再建に必要な厳しい姿勢は崩さないと言い切った。
「国民に向かって嘘はつかない」と、バルスは語った。「努力する必要はないとか、フランスを苦しめている財政赤字や債務を減らさなくていいなどと言うつもりはない」
社会党右派のバルスは、イギリスのトニー・ブレア元首相によくなぞらえられる。90年代にブレアとその仲間が、保守党のマーガレット・サッチャー首相(当時)から嘲笑され続けた労働党を変身させたように、バルスは現在の不人気を逆手に取って社会党を再生させるのではないかという声もある。
しかしブレアの労働党は、長いこと野党だったおかげで「ニューレーバー(新しい労働党)」に生まれ変わる準備ができた。バルスはフランスを経済低迷から救い出し、国民戦線と闘いながら社会党を変えなくてはならない。
しかもブレアは、伝統的な左派の政策が有権者離れを招いたとの認識に支えられていた。対してフランスでは、旧式の左派をまねてルペンが主張する保護主義や国家干渉といった政策を支持する国民が多い。
フランスの中道右派も社会党よりましだとは言えない。UMPのジャンフランソワ・コペ党首は、国民戦線に敗れたことや、12年の大統領選に絡む党内の資金スキャンダルの責任を取って辞任した。
国民戦線のルペンが出馬を宣言した17年大統領選まで、あと3年。分裂し、意気消沈しているフランスの主流政治家に残された時間はあまりない。
From GlobalPost.com特約
[2014年6月10日号掲載]