「進撃の極右」が映し出すもの
ルペンの経済政策は、与党には十分な攻撃材料になるはずだ。ただオランドとマニュエル・バルス首相を悩ますのは、多くの国民はもちろん、社会党員までがルペンの見方の少なくとも一部に共感している点だ。フランスの苦しみはEUに押し付けられた自由貿易と緊縮財政のせいであり、これを打開するには保護主義と財政出動が必要だという見方が強い。
4月には、社会党議員41人が政府の500億ユーロの歳出削減案の議会投票を棄権した。10年にはGDP比82%だった公的債務が昨年は93%に上昇した、これを抑制するために必要な削減だとバルスは訴え、ようやく僅差で可決した。
「右派もしのぐようなオランドの公共支出削減計画は、社会党支持者には侮辱でしかない」と、オランド批判に回ったパスカル・シェルキ議員は言う。「彼らが私たちに背を向けても驚かない。冷たい怒りや憎しみさえ沸き上がるのを感じる。大統領と首相は、左派の市民を大切にしなくてはならないのに」
オランドの支持率は、大統領就任時の55%からこの2年で18%に急降下した。非難の矛先は何よりも、失業率を抑えるという公約を果たせないことに向けられている。EUの要求に沿って財政赤字削減と増税を進めているが、企業寄りのささやかな改革さえ雇用安定や週35時間労働制などの権利が脅かされると、支持者の怒りを買っている。
17年大統領選に勝機は
バルスは社会党が統一地方選で惨敗した後の3月、首相に任命された。彼の使命は、17年の大統領選までに政府の運命を好転させることだ。
前内相のバルスは、押しの強いことで知られている。オランドとは09年に大統領候補の座を争ったが、大統領選ではオランド陣営に加わった。
フランス政界では大統領がバットマン、首相が補佐役のロビンのような役割を果たす。だがメディアはバルスを「共同大統領」扱いしている。バルス個人の人気はオランドを上回り、ジュルナル・デュ・ディマンシュ紙の4月中旬の調査では56%の支持率を獲得した。