タイ首相のクビを切った司法クーデターの行方
インラックを悩ませてきたのは、裁判所だけではない。この数カ月、王政主義のデモ隊は彼女を拉致すると脅迫し、民主政府の代わりに人民評議会の設立を要求してきた。
裁判所にも公然と認められているこの反政府勢力は、インラックが所属するタイ貢献党が勝利すると目されていた2月の選挙では投票を妨害。当選者が確定しない事態を引き起こし、インラックを追放するよう裁判官たちをけしかけてきた。
一方タイ北部では、裁判所と軍に選挙結果をねじ曲げられることに反発した勢力が「赤シャツ隊」を結成。クーデターを未然に阻止するのが彼らの狙いだ。だが、リーダーの1人は、今回のインラックへの「不当判決」で赤シャツ隊が反クーデターを叫んで戦うことはないだろうと話す。今回の判決でインラックと9人の閣僚は失職したが、選挙で選ばれた与党自体は解散していないからだ。
だがその存在感も風前のともしびだ。タイ貢献党は、昨年12月の下院解散後、次回の総選挙までの「暫定政府」にとどまっている。タイ貢献党が巻き返すと見られていた2月の選挙は実質的に無効となり、次に行われるのは7月の予定だ。それまでは、ニワットタムロン副首相兼商業相が首相代行を務めるしかない。
次回選挙でインラックが勝利すれば、再び政権の座に返り咲くことができるかもしれない。だが、選挙で選ばれた指導者を軍や裁判所が意のままに辞任に追い込むねじれた民主主義は、簡単に治りそうもない。
From GlobalPost.com特約
[2014年5月20日号掲載]