タイでデモが繰り返す理由
バンコクに耐えがたい渋滞を作り出して政権を奪取しようというデモ隊の狙いは
新たな人質 デモ隊の言い分が通る傾向にあるタイで今度は道路封鎖 Nir Elias-Reuters
普段からひどい渋滞に悩まされているタイの首都バンコクの道路状況が、今以上に悪化しそうだ。
反政府デモ隊は現在、バンコク市内で最も交通量の多い交差点7カ所を封鎖している。彼らの戦術は、耐えがたいほどの渋滞を作り出すことで総選挙を中止に追い込み、選挙ではなく利益団体の代表で作る「人民議会」に政府の権力を移譲させることだ。
「バンコク選挙作戦」と呼ばれる今回の暴動は、昨年12月に発生した政府や省庁の占拠騒動に続く最新の抗議活動。今回のデモで、11年の選挙で勝利したインラック・シナワット首相率いる議会は解散に追い込まれ、来月初頭に総選挙が行われることになった。
だがデモ隊は、政権側の譲歩に満足していない。バンコク選挙作戦の指導者や信奉者らは、政府がすべての要求を受け入れるまで首都交通の要所を封鎖すると断言している。
クーデターという言葉を意識的に回避しながらも、デモ隊のリーダーたちが政権の奪取を目指しているのは明らかだ。リーダーのステープ・トゥアクスパン元副首相は、政府を支配してタイの汚職を一掃するために人民議会を設置すると宣言している。
道路封鎖が長引けば、経済的打撃も大きくなる。タイ商工会議所大学によれば、封鎖により日に3000万ドルの損出が出る可能性がある。すでにデモがらみで8人が死亡しており、流血の事態に発展するリスクも高い。
いつまで封鎖が続くのかを予測するのは難しい。ステープ元副首相は「勝利するまで戦う」と気勢を上げており、デモ隊の別のリーダーであるニティトン・ラムルアも、インラック首相が1月15日までに国外退避しなければ航空管制センターを封鎖すると脅している。
13日には何万人もの市民がデモに加わっている。現在、デモ隊の規模は最大で20万人に達しており、警官や治安部隊は2万人ほど配備されている。
デモに慣れっこの住民
反政府運動は、タイの歴史上もっとも成功し、しぶとい政党の1つであるタクシン派を根絶させることに主眼を置いている。
強力なタクシン一族が率いるこの政治勢力は、過去10年以上すべての大きな選挙で勝利を収めてきた。指導者のタクシン・シナワット元首相は06年のクーデターで職を追われ、現在は汚職で投獄されるのを避けるためにドバイに亡命している。現在のインラック首相(46)は彼の妹だ。