米軍公認部隊にはびこるレイプ魔
だが現実には、ALP要員にかなりの数の民兵(アルバカイ)が潜り込んでいるらしい。これらの民兵は、80年代の反ソ武装闘争を担ったイスラム系武装勢力の流れをくみ、当時の指揮官らに絶対的な忠誠を誓っている。多くは無規律で、略奪や村人への虐待、レイプなどを繰り返している。問題はALPと民兵の区別がつきにくいことだ。
一般住民にとっては、ALPも民兵も「同じ穴のむじな」だ。この事態には米国防総省も気付いていて、昨年12月に出した報告書では「ALPを名乗る民兵の横暴が......ALPの正統性を脅かしている」と危機感をあらわにした。
タリバンがALPに工作員を潜入させ、混乱を引き起こしている形跡もある。
昨年8月には西部ファラー州で、米兵2人がALP要員に殺害された。翌9月には東部ガズニ州で、タリバンの潜入工作員がALP要員11人と民間人6人に発砲する事件が発生した。こうした事態を受けて、アメリカ政府はALPの訓練を中断し、現役要員の身元調査を「再確認」する事態に追い込まれた。
報われない告発の勇気
ジュマディンは、娘をレイプしたのは同国北部の有力者ミール・アラム・カーンの指揮下にある民兵だと確信している。
カーンはかつて、反ソ武装闘争に参加した軍閥の1人だ。今も大きな力を維持している民兵組織の指導者の常として、あの9・11テロ後には米軍のタリバン掃討に協力することで経済的な支援を受け、その勢力を拡大してきた。クンドゥズ州だけでも、カーンの指揮下には約3000人の民兵がいるとされる。そして住民らによれば、その一部はALPと一体化している。
モニジャと同様にレイプされた少女の1人に、17歳のチャマン・グルがいる。親族によれば「健康的で魅力的」な少女だ。
グルは本誌の電話取材に応じ、2カ月前にジョズジャン州で経験した惨劇について語った。なんと7人もの男にレイプされたという。
その7人の中には、地元民兵組織の司令官ムラド・バイもいたという。「彼らはドアを破って家に入ってきた。誰にも言えない、言葉にできないほど恐ろしいことを何度もされた」と、現在は秘密の隠れ家で暮らしているグルは語った。
大部分の被害者と家族は泣き寝入りするが、グルは父親と共に地区と州の当局に被害を訴えた。だがそれも無駄だった。「誰一人として、耳を傾けてくれる人はいなかった」
ダルザブ地区の警察署長に至っては、グルと父親を警察署から追い出した。「手助けどころか、同情のかけらもなかった」とグルは言う。「別の警官は、バイはアメリカのお気に入りだから誰も手出しできないと公言した」
州都シェベルガンまで足を運び、地元警察のこうした対応について苦情を申し立てたが、やはりバイと戦うことに協力してくれる人はいなかった。もう当局に助けを期待するのは諦め、今は自殺も考えている、と彼女は言った。
実際、地元の当局者たちは彼女に同情するどころか、彼女を悪者に仕立てようとしている。
州警察の報道官は、グルは処女ではなくタリバンの男と婚約していたと主張。本心ではバイと結婚したがっていた、というばかげた主張までまかり通っている。嫉妬に駆られた婚約者がバイを陥れるためにレイプの話をでっち上げたというのだ。
親族の1人は本誌の取材に応じ、グルが婚約していたことは認めたが、バイが彼女をレイプしたという主張は崩さず、「俺がボスだ。だから俺には女の純潔を奪う権利がある。バイはそう吹聴していた、と村人から聞いた」と語った。
その後、グルとその家族は何度も殺しの脅迫を受けた。グルが身を隠して暮らしているのもそのためだ。