米軍公認部隊にはびこるレイプ魔
地域の治安を守るべく創設された「地方警察」が無垢な少女を襲い、住民の怒りは彼らを育てたアメリカへ
純潔の敵 カブールの家に入るアフガニスタン女性。いつも警察や民兵の性的暴行の恐怖に怯えている Ahmad Masood-Reuters
その日、夜更けに自宅へ帰ったジュマディン(45)は愕然とした。入り口の扉が乱暴に壊されている。いったい何が? 物音ひとつせず、人の気配もない。留守番していたはずの娘モニジャ(19)はどこへ?
今年1月のことだ。妻はアフガニスタン北部クンドゥズ州の自宅から幼い子供たちを連れて、パキスタンに住む親戚の家を訪ねていた。だから長女が1人で留守を守っていた。そこへ何者かが侵入したのだとすれば......。
父の悪い予感は当たった。家じゅうを捜し回り、ようやく家畜小屋で見つけたとき、娘は首をつろうとしていた。
父は震える娘を抱き締め、毛布にくるんで落ち着かせた。しかし「あの子は私と目を合わせようとしなかった」と、ジュマディンは本誌に語った。
無理もない。モニジャは3人の男たちに繰り返しレイプされていたのだ。しかも男たちは、米軍公認のアフガニスタン地方警察(ALP)の制服を着ていたという。怒りと絶望を抑えて、父は娘に言い聞かせた。「運命と思うしかない。この恥辱を、私と一緒に耐えてくれ」
まじめに農業を営んできたジュマディンは言う。「ひどい世の中だ。力のある連中にレイプされたら、その娘も娘の家族も泣き寝入りするしかない。貧困や災害なら耐えられる。しかしレイプは一家の恥、家族も二度と元どおりにはなれない」
翌朝、ジュマディンは村のモスク(イスラム礼拝所)に出向き、前夜の出来事について聞いて回った。村人たちの話では、米軍の指揮下にあるはずのALP要員が、イスラム原理主義勢力タリバンの摘発という名目で家々に踏み込んだという。
ジュマディンはパキスタンで家族と合流するため、家畜や家財道具を売り払った。「娘の人生と家族の未来を奪った場所にはとどまれない」と、彼は言う。
ジュマディン一家は現在、パキスタン側の難民キャンプで暮らしている。モニジャはまだ立ち直れず、毎晩悪夢にうなされているという。「タリバンの時代なら、女がレイプされることはなかった。いっそ自分もタリバンに加わり、爆弾を巻いたチョッキを着て、(大統領のハミド・)カルザイやアメリカ人、そして彼らが育てたALPの奴らを吹っ飛ばしてやりたい」
ジュマディンの娘だけではない。今やクンドゥズ州や同じ北部のジョズジャン州では、ALPや「アルバカイ」と呼ばれる民兵たちは「少女の純潔を奪う敵」と呼ばれている。
成り済まし事件も発生
戦闘部隊の全面撤退を来年に控え、米軍はALPを地域の治安部隊と位置付けて組織してきた。武装したALPが地域社会でタリバンの浸透を防ぎ、その間に国軍がタリバン掃討に注力するという役割分担だ。
ALP要員は地元で募集し、身元調査をした上で採用を決め、米軍の特殊部隊が3週間の訓練を施し、武器も制服も支給する。月190ドルほどの給料も、アメリカが提供する資金から払われている。ALP要員は、今はまだ北部を中心に約2万人にすぎないが、アメリカは18年までに4万5000人規模に増員する計画で、総額12億ドルの追加支援も決めている。