シリアで始まった対メディア戦争
8割がフリーランスか
今年2月にはフランスのカメラマン、オリビエ・ボワザンがシリアで取材中に被弾し、トルコの病院で死亡した。民間団体「ジャーナリスト保護委員会」によれば、内戦が始まった11年以降、シリアで犠牲になった記者は少なくとも32人いる(このうち外国人は6人)。
メディアも記者をシリアに送り込むことに慎重になっている。フリーランスの記事や写真を使わないメディアもある。イギリスの日曜新聞で最大部数を誇るサンデー・タイムズ紙は、フリー記者を使わない方針を決めた。
「理由の1つはオースティン・タイスとジェームズ・フォーリーだ」と、同紙のショーン・ライアン国際部長は言う。「記者2人が行方不明で、拉致された人もいる。どれだけ経験を積んでいるか分からない人を使うわけにはいかない」
エル・ムンド紙(スペイン)の記者ハビエル・エスピノサの推定では、シリア内戦を取材している記者の8割がフリーランスだ。しかも若い記者が多い。
FSAの新方針はフリー記者には打撃だ。FSAの運転手や通訳を使うと経費が少なくとも4倍になる。おまけに大手メディアが記事や写真を使ってくれないから、シリアに入るフリー記者自体が減る。こうしてシリアについてのバランスの取れた記事は、さらに減っていく。
[2013年4月16日号掲載]