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韓国候補者一本化にみる韓国野党のジレンマ
12月の大統領選での勝利を目指し、野党の有力候補2人のうち1人が身を引くことになったが、どちらが消えても打撃は大きい
苦渋の選択 民主統合党の文在寅(ムン・ジェイン、左)と無所属の安哲秀(アン・チョルス) Kim Hong-Ji-Reuters
野党系候補2人のうちどちらかが降りなければ、与党候補には勝てない。しかしここで選挙戦から降りれば、大統領になれない──。12月19日に投票が行われる韓国大統領選で、野党陣営は大きなジレンマに直面している。
現在の有力候補者は、与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クンヘ)と最大野党・民主統合党の文在寅(ムン・ジェイン)、無所属の安哲秀(アン・チョルス)の3人。「三つどもえ」の戦いになるとみられていたが、文と安が先ごろ、選挙戦スタートまでに候補者を一本化することで合意した。
野党陣営が分裂したまま選挙になれば、朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の娘で保守層の支持が固い朴の勝利は目に見えていた。調査会社リアルメーターによる今月初めの世論調査では、朴の支持率は約43%でトップ。安が約27%、文が約24%と続く。
文と安のどちらかに候補者を一本化できれば、野党陣営に勝機が生まれるのは火を見るより明らかだ。文は盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領の側近だったことで知られているが、一方の安は起業家出身の元ソウル大学教授で、既存の政党政治の刷新を訴えている。候補者を安に一本化すれば、若者を中心により幅広い無党派層の支持を取り付けることができる。しかし事はそう簡単ではない。
無党派層を手放すか、最大野党の崩壊か
韓国では、就任した新大統領が新党を設立し、勝ち馬に乗ろうとする国会議員が与野党から結集するのが政界の常識。92年の大統領選でも、保守系の統一候補として立候補した金泳三(キム・ヨンサム)は当選後に「新韓国党」を結成し、現在のセヌリ党へと続く保守勢力の基盤をつくり上げた。
文を擁立する民主統合党から見れば、安が当選後に新党を立ち上げれば民主統合党が崩壊することは分かり切っており、安への候補者一本化は簡単にはのめるものではない。
反対に、候補者を文に一本化して当選すれば、民主統合党は安泰だ。しかし選挙戦での勝利は怪しくなる。安の「政治刷新」路線を支持する無党派層の票が期待できなくなるからだ。
このまま朴優勢で選挙戦に突入するか、それとも朴打倒を目指して文と安のどちらかが身を引くか。選挙後の政界再編も視野に入れたぎりぎりの神経戦が続いているが、残された時間は少ない。
[2012年11月21日号掲載]