イラン通貨大暴落の深刻度
通貨リアルが1週間で50%も急落。アハマディネジャド政権に対する国民の不満が爆発する
絶体絶命? 大統領就任当初は議会や革命防衛隊から全面的に支持されていたアハマディネジャドだが…… Brendan McDermid-Reuters
イラン経済が激震に見舞われている。通貨リアルは1週間で50%も下落。この通貨危機にイラン政府が短期間で歯止めをかけられるかどうかは不明だ。
先週半ば、首都テヘランの伝統的なバザール(市場)ではほぼすべての店が営業を停止。警察と革命防衛隊は、通貨安への抗議のために集まっていた商店主や経営者を逮捕した。
ある目撃者が本誌に語ったところによると、テヘランの両替商の大半が店を構えるフェルドゥーシー広場の付近では、治安警察部隊が厳戒体制を敷いていた。市内の商業地区はまるで戦闘地域のようだったという。
通貨危機の原因は政府の失政か、それとも長期にわたるアメリカの経済制裁がようやく効果を発揮し始めたのか。国内外のアナリストの見方は分かれているが、大方の意見が一致する点もある。ただでさえ厳しい立場のマフムード・アハマディネジャド大統領にとって、今回のリアル急落は極めて悪いニュースだということだ。
9月初めの時点では、アハマディネジャドは通貨危機の懸念を一蹴した。リアルの対ドルレートは1ドル=3万リアルを記録するのではないかという記者からの質問に対し、その種の予測は「心理戦争」にすぎないと否定した。
そのわずか4週間後、リアルは1ドル=3万5000リアルまで下落。テヘランのある経営者によると、為替市場は開店休業状態だという。リアルが急落中の今、誰もドルを売ろうとしないからだ。
「経済の悪化が制裁の結果なのか、体制内の腐敗分子による市場介入のせいなのかはともかく、人々は政府の経済失政を非難している」と、テヘランのあるジャーナリストは匿名を条件に語った。「国民は希望を失いつつある。朝から夕方までの間に商品の値段が変わるインフレには耐えられない。それなのにアハマディネジャドは、深刻な問題に直面していることをまだ認めようとしない」
テヘランで食品流通業を営むある人物は、今週は営業を休止にして従業員に自宅待機を指示したという。「今は商売をしても損を出すだけだ。来週には稼いだカネの価値が半分になるかもしれないんだから」
今のところ、リアルの急落に対する国民の不満はアハマディネジャド政権に直接向けられているようだ。「デモ隊が叫ぶスローガンを注意深く聞けば、大半が政治的ではなく経済的なものだということが分かる。人々の怒りはアメリカや国際社会の制裁ではなく、自国政府に向けられている」と、カーネギー国際平和財団の上級アナリスト、カリーム・サドジャドプールは指摘する。
「イラン人は望ましい政治体制については意見が割れているが、もっと経済を重視してほしいと考える点では意見が一致している」
リアルの急落はアハマディネジャドと議会との権力闘争を激化させている。議員たちは、大統領の誤った政策が経済危機の元凶だと考えている。