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ノーベル平和賞EUにノーベル平和賞は笑えない冗談
ノーベル賞委員会が平和への貢献を称えたのとは裏腹に、現実のEUは分裂の危機で崩壊寸前
怒り爆発 メルケル独首相がギリシャを訪れた際には、ナチスの旗を掲げたデモ隊が抗議活動を繰り広げた(10月9日) Yannis Behrakis-Reuters
「EU(欧州連合)が安定的に果たしてきた役割によって、ヨーロッパは戦争の大陸から平和の大陸に変わった」――先週、今年のノーベル平和賞をEUに授与することを発表したノルウェーのノーベル賞委員会は、高らかにうたい上げた。
委員会はギリシャやスペインを始め、多くの加盟国が独裁国家や共産国家から民主国家へと変貌を遂げた歴史をたたえた。また、EUの中核を為すドイツとフランスが、かつては70年の間に3つの戦争を繰り広げた宿敵同士だったことにも触れた。「こうした歴史から分かるのは、正しい目的のために努力を続け、互いに信頼を積み重ねていけば、長年の宿敵でも緊密なパートナーになり得るということだ」と、委員会は指摘した。
だが現実のEUは今、深刻な分断の危機に直面している。経済危機はEU加盟国の多くを不況に引きずり込み、ドイツ率いる裕福な北部諸国と、ギリシャやスペインのような借金漬けの南部諸国の間に深い亀裂を走らせた。
各国政府が財政支援の条件をめぐって争うなか、北部諸国では南部諸国の「怠けっぷり」をあざけるのが常態化している。一方では、威圧的なドイツ人が苦境の周辺国に協力するのを嫌がる様子を描いた風刺画も出回っている。ドイツのアンゲラ・メルケル首相が先週ギリシャの首都アテネを訪問した際には、デモ隊がナチスの旗を掲げる始末だった。
各国で台頭する「反EU」政党
ギリシャやフィンランド、オランダといった国々では、反EU、国家主義を掲げる極右政党が台頭している。ドイツの新聞各紙は、ギリシャをユーロ圏から追い出すべきだ、あるいはドイツ自らEUを脱退せよと主張する。イギリスではキャメロン首相率いる保守党内からも、EU離脱の是非について国民投票を行うべきとの声が上がっている。
単一通貨ユーロに加盟しておらず、もともとユーロ圏構想に懐疑的なイギリス人にとっては、EUのノーベル賞受賞はいい笑いの種だ。「ノーベル賞委員会の決定は、エイプリルフールの冗談にしては遅過ぎる」と、イギリス出身の欧州議会議員マーティン・カラナンは皮肉った。
財政支援と引き換えにEUから厳しい緊縮策を迫られているギリシャでは、市民の間で怒りさえ噴出している。首都アテネで最近失業したばかりの美容師クリストウラ・パナギオティディは、今回のノーベル平和賞は「私たちの今の状況を馬鹿にしているとしか思えない」と地元紙に語った。
From GlobalPost.com特約