最新記事

社会

中国からガイジンをつまみ出せ!?

2012年9月20日(木)15時47分
ダンカン・ヒューイット(上海)

二級市民扱いに憤る地元住民

 文化大革命の間、政府は外国人を非難していたが、80年代に経済改革が始まると突然「外国人を特別なゲストに格上げした」と洪は言う。外国人専用の店やホテルができ、中国人は二級市民の感覚を味わった。

 結果として今でも外国人をVIP扱いする傾向がある。交通違反をしても、外国人はおとがめなしになりがちだ。中国が豊かになったので、外国人と対等な扱いを望む人は多い。

 さらに国内の経済格差によって生み出された特権階級に対する恨みが裕福と見なされている外国人にも投影され、外国人の悪事に対する怒りが盛り上がる、と洪は言う。「過去には外国人へのもてなしを義務付けられた時期もある。そういう記憶があるから、外国人とうまく付き合えない」

 中国に暮らす外国人の数は100万人程度と比較的少ないが、主要都市ではかなり多くなってきている。外国人が増えるにつれ、中国人はあらゆる種類の外国人との付き合い方を覚えなくてはならないだろう。

 人種という問題の扱い方も見直す必要がありそうだ。今の中国は二重国籍を認めておらず、民族的に中国人であれば外国籍でも「中国人」と見なしがちだ。そこで問題になるのは、国際結婚で生まれた子供に国がどう対処するかだ。上海だけでも2万7000人の中国人が外国人と結婚しており、その子供たちは今も「混血」呼ばわりされている(ただし最近では、混血の子のほうが「頭がいい」とか「きれいだ」とかいう評価も増えてきている)。

 北京理工大学の胡教授は、中国人と外国人との関係は「よくなるはずだ。社会がもっと成熟し、外国人を歓迎するようになると思う」と言いつつも、人種差別を禁じる法律があれば役に立つと指摘した。

 いずれにせよ、まずは当局が楊に指示するべきだ。中国の国際的なイメージを改善するために英語で世界に発信する番組のホスト役であるからには、今後は「クズ外人」といった表現は避けるように、と。

[2012年8月29日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:イスラエル、ヒズボラと停戦でもガザでの合

ビジネス

ECB総裁、貿易戦争は「誰の利益にもならず」=FT

ワールド

インドネシア地方選、大統領派が勝利へ ジャカルタは

ビジネス

日経平均は3日ぶり反発、対中規制めぐる報道で半導体
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 3
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウクライナ無人機攻撃の標的に 「巨大な炎」が撮影される
  • 4
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 5
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 6
    「健康寿命」を2歳伸ばす...日本生命が7万人の全役員…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 9
    未婚化・少子化の裏で進行する、「持てる者」と「持…
  • 10
    谷間が丸出し、下は穿かず? 母になったヘイリー・ビ…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 10
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中