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エジプトムバラク後初の選挙に野党反発で流血か
軍が民衆への発砲を拒否し平和的に独裁政権を倒したエジプトで、軍と反体制派の対立が表面化。民主化の代わりに今度こそ暴力が吹き荒れる恐れがある
革命半ば カイロで気勢を上げる反ムバラク・反軍派(9月24日) Amr Dalsh-Reuters
エジプトでは、2月のムバラク政権崩壊後初の人民議会選挙が11月28日に実施される。しかし選挙をめぐってはエジプト軍幹部が、ホスニ・ムバラク前大統領を支えた旧与党勢力が議会で大多数を確保できるよう企てている、と非難されている。
その結果、最大野党勢力「ムスリム同胞団」などのイスラム政党も世俗派政党もそろって選挙をボイコットする構えを見せている、と英デイリー・テレグラフ紙電子版は報じた。
同紙によればムスリム同胞団は、エジプトを暫定統治している軍最高評議会が10月2日までに選挙制度の見直しを行うよう要求。さもなければ、人々は大規模なボイコット運動を起こすだろうとしている。
これはエジプト史における、「非宗教的な反体制運動と国を統治する軍人の対立」という新たな章の始まりだ。
エジプトではリビアやシリアのような国と違い、多くの血が流れることなく革命が達成された。それは軍が果たした役割のおかげだ。エジプト軍は抗議デモを行う民衆への銃撃をはっきりと拒否し、ムバラクに退陣を迫った。だが大統領と親密な関係にあった軍に対しては、今も多くの人が疑いの目を向けている。
小選挙区では旧ムバラク派が有利
11月の選挙は、革命後のエジプトにとって最初の試金石となる。野党のボイコットが起きれば、この国はあっけなく暴力の渦に巻き込まれるだろう。
テレグラフは以下のような問題を指摘する。
60の政党からなる野党連合は、議席の3分の1は無所属の候補者による小選挙区制で選ぶ、という規定の撤廃を要求している。それでは金や知名度のある旧与党勢力が有利になるからだ。
野党側はさらに、ムバラクとつながりのある元議員の立候補を10年間にわたり禁じる法律の導入も求めている。
こうした動きに対し、エジプト軍はフェースブックで声明を発表。民主主義や国家の安全を脅かすいかなるものにも反対するとし、「議会選挙への要求から始まった民主的変革を妨げようとする人々」に対して警告すると、AFPは伝えている。
軍最高評議会は「抗議行動を呼び掛けた人々は、行動を計画し、安全を確保し、すべての私的・公的財産が守られるようにする義務がある」と述べた。「あらゆる軍事施設や重要建物への不法侵入は、エジプトの国家安全保障への脅威だとみなされ、厳格に対処される」