最新記事
インド「金持ち国家」の誤解で滞る国際援助
海外メディアが成功したビジネスマンばかりを取り上げるお陰で、もう援助なんか卒業だろうと見られてしまう悲劇
繁栄からは遠く 北部の豊かな都市チャンディガルで水不足を抗議する貧困層(09年) Ajay Verma-Reuters
経済成長が急速に進み、次々と億万長者が生まれるインド。先進国が今までどおりこの国に経済援助を続けることは、果たして理にかなっているのだろうか。
アメリカの大富豪に資産の半分を寄付しようと呼び掛ける社会貢献運動を展開するビル・ゲイツとウォーレン・バフェットは、最近インドを訪れた。この国の富裕層に、慈善活動への寄付を増やすべきだと説くためだ。
経済成長の一方で、膨大な人口を抱えるインドでは依然として貧困と病気との闘いが続いている。繁栄は農村部の住民たちにまでは行き渡っていない。
巨額の国際援助が有効に活用されていないのも原因だ。最近の会計検査院の発表によると、公共事業計画で不手際があり、昨年は約200億ドルの援助金が放置された。
かといって、援助金が不必要だったわけではない。都市開発に50億ドル、農村開発に20億ドル、上下水道整備20億ドルなど、国内16地域の重要問題に使われるはずだった。単に官公庁が怠慢だったのではと指摘されている。
一方、貧困との闘いの最前線では、資金の調達に苦労しているのが実情だ。「欧米ではフォーブス誌の長者番付に登場したインド人とか躍進するインドIT産業とか、景気のいい話ばかり報道されている」と、国際人道支援団体ワールドビジョン・インディアのアーナンド・ジョシュアは言う。「悲惨な状況は伝えられていない」
実際、80年代には世界最大の被援助国だったインドは、最近ではアフガニスタンやアフリカに資金提供をするまでになった。
こうした状況を受け、イギリスは事業援助を15年まで年間2億8000万ポンドに凍結し、対象を最貧地域のみに絞ると発表。アメリカやオランダも援助を大幅に縮小した。
その結果、支援団体は「重大な資金難」に直面しているという。日刊紙タイムズ・オブ・インディアによると、援助団体オックスファム・インドの今年の資金は必要額の3分の1以下で、オランダのNGOヒーボスはインド向け予算を40%カットしたという。
「インドには十分富がある、だから貧しい国民の面倒くらい自分で見られるだろう、とよく言われる」とジョシュアは言う。何とか捻出してもらった援助金さえ政府がまともに使えないようでは、外国からの資金援助は先細りになる一方だ。
[2011年4月20日号掲載]