環境保護が地球の未来を潰す?
CO2削減より成長を
私たちは過去の歴史から、国が豊かになればなるほど温暖化問題への対応能力も上がることを知っている。豊かな国は自然災害から立ち直る力が強く、環境に優しい都市や洪水対策のために多額の投資もできる。
まずはすべての国がより豊かに、より強くなることを優先すべきなのだ。しかし、これまでの温暖化対策はCO2の排出量削減を急ぎ過ぎていた。
このアプローチは歴史を無視したやり方だ。私たちはこれまで、成長や対策の発見、イノベーションを通じて疾病や栄養不良、環境問題を改善してきた。貧困から脱した数億の人々に対し、「石炭を燃やすな。繁栄を諦めて貧しい生活に戻れ」と言うのは無理な話だ。
先進国は92年の地球サミット(環境と開発に関する国連会議)で、00年までに温室効果ガスの排出量を90年の水準に減らすという大目標を掲げた。それ以来、大幅な排出削減の取り組みは失敗の連続だ。
09年の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)では、削減目標の合意すらできなかった。各国の交渉担当者は今年11月に南アフリカで開催される第17回締約国会議(COP17)で再び話し合う予定だが、口先だけの約束では持続可能な開発は実現できない。
中国をはじめとする途上国の環境汚染は確かに深刻な問題だ。だが歴史を振り返ると、人類はより優れた技術を開発することで、生活水準の向上とクリーンな環境を手に入れてきた。
イノベーションと創意工夫。この2つが問題解決の重要なカギになってきたことを、私たちは忘れている。持続可能な生活とは、歴史から教訓を学ぶ生き方にほかならない。
私たちが将来の世代に残せる最良の遺産は、彼らが未知の困難に直面したとき、きちんと対処できるような「豊かさ」だ。これこそ歴史が教えてくれる最も重要な教訓である。
(筆者はコペンハーゲン環境評価研究所所長で、『環境危機をあおってはいけない──地球環境のホントの実態』の著者)
[2011年7月 6日号掲載]