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音楽肉食系レディー・ガガのもう一つの顔
若者から絶大な支持を集める真の理由は、孤独やコンプレックスに悩む「はみ出し者」たちにひたすら自己肯定を説くから
弱者の味方 過激なパフォーマンスとは裏腹に、若いファンに対し「ありのままの自分でいい」というメッセージを発し続けるレディー・ガガ Issei Kato-Reuters
レディー・ガガはマドンナのパクリだという批判はよく耳にする。しかし本当はむしろ、人気テレビ司会者オプラ・ウィンフリーのパクリだと言うべきかもしれない。
「自分らしく自分を愛し、誇りを持って。あなたはこんなふうに生まれてきたのだから」と、オプラは25年続いたトーク番組『オプラ・ウィンフリー・ショー』の最終回でファンにこう語り掛けた......。いや違う、オプラじゃない。これはレディー・ガガが別の番組で語った言葉だった。ガガは大きな鼻と出っ歯のせいでいじめられた子供時代を告白し、「学校でいじめられると一生引きずる」と述べた。
一部で酷評されながらも、最新アルバム『ボーン・ディス・ウェイ』が大ヒットしているのはなぜか。その理由を知りたいなら、ガガの歌声ではなくその「説教」に耳を傾けなければならない。
「私も昔は勇敢じゃなかった。今夜は不安なんて全部忘れて」と先日、ガガはオハイオ州クリーブランドでのコンサートでファンに語り掛けた。「自分が受け入れられていないような気分にさせられる相手がいたら、無視していいのよ」。ガガは「リトルモンスター」と呼ぶ自分のファンに向かって、そんな話を繰り返した。
はみ出し者の心を照らす
オプラが中年の主婦や失業中の男性向けにやっているのと同じように、ガガは若い世代にお手軽な心の道しるべを提供している。ファンはそれを丸ごと受け入れ、ガガの言動を逐一、ツイッターでフォローする。
クリーブランドのコンサートを見に来た22歳のファンは「ガガは私に力を与えてくれる。自傷行為や鬱や摂食障害、容姿の悩みやいじめを経験したり、同性愛者であることを公表したファンの子たちと話をしたら、みんな『ガガが力になってくれた』って言ってた」と語った。
ガガは、はみ出し者(もしくは不器用なティーンエージャー)として生きることがどんなにつらいか、よく分かっている。少女時代、通っていたカトリック系の学校の級友たちはガガのことを変人扱いし、ごみ箱に押し込んだりした。
ガガの友人でバンド「セミ・プレシャス・ウェポンズ」のジャスティン・トランターは言う。「(同じ学校の)女の子たちはガガに『どうしてそんなに着飾ったり、メークに時間をかけたりしてるの? あんたレズビアン?』って聞いてばかりいた」
「信じられないほどの創造力で彼女は人々の心を照らし、この不穏な時代を生き抜く力を与えている」と、友人でアーティストのヨーコ・オノは言う。そういえばガガ自身、ファンにこんなことを言ってたっけ。「誰かとつながり、その人を抱き締め、解放し、愛しなさい」と。
おっと間違えた。こっちはオプラの発言だった。
[2011年6月15日号掲載]