最新記事

領土問題

ベトナムvs中国、南シナ海バトルの行方

2011年6月15日(水)18時31分
キャスリーン・マクラフリン

アメリカが介入する可能性は低いが

 問題は地域内に留まらなくなっている。ベトナムが国際的な支持を求める一方、中国は6月14日に他国、特にアメリカが余計な口出しをしないようクギを刺した。中国外務省の広報官、洪磊(ホン・レイ)は、この海に対する中国の立場は「明確で一貫している」と語った。「南シナ海を巡る論争に無関係の国々には、関係諸国が直接交渉で問題解決しようとする努力を尊重してほしい」

 清華大学国際問題研究所長(北京)の閻学通(イェン・シュエトン)は、アメリカがこの問題を刺激する行動に出れば、米中関係に悪影響を及ぼすだけだと語った。南シナ海問題によって、6月に予定されているヒラリー・クリントン米国務長官の訪中はさらに重要性を増すだろう。「現段階では、アメリカがこの問題に介入しすぎることはないだろう」と、閻は話す。

 南シナ海問題の専門家であるアモイ大学のリー・ジミンも、この意見に賛成だ。「落ち着いて二国間協議を行うべきだ。周辺国は平和を念頭に置くべきだ。状況がさらに緊迫すれば誰も得をしない」と、リーは言う。「多国間協議は状況をさらに複雑にするだけだ。アメリカにできることはあまりない」

 中国の一貫性のないメッセージのせいで、対立がさらに深まるとみる専門家もいる。カーネギー国際平和財団の裴明欣(ペイ・ ミンシン)は外交専門誌ディプロマットで、対立は「激化に危険なほど近づいている」と書いている。

「現時点で、ベトナムとの醜く危険をはらんだ衝突は中国が最も望んでいないものだ」と、裴は論じる。「だが同時に中国政府には、領有権問題では妥協しないことを示す必要性もある」

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:ウクライナ巡り市民が告発し合うロシア、「密告

ワールド

台湾総統、太平洋3カ国訪問へ 米立ち寄り先の詳細は

ワールド

IAEA理事会、イランに協力改善求める決議採択

ワールド

中国、二国間貿易推進へ米国と対話する用意ある=商務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中