最新記事

リビア

南アのズマは同志カダフィを止められるか

内戦が続くリビアの独裁者は、ズマ大統領の仲介で退陣を受け入れるのか

2011年5月31日(火)16時36分

決断のとき カダフィ(右)とズマ(左隣)は「出口戦略」を話し合った Reuters TV-Reuters

 5月30日、南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領がリビアの首都トリポリを訪れ、最高指導者ムアマル・カダフィ大佐と会談した。2月半ばから反体制派と政府軍の衝突が続き、カダフィの退陣を求める国際的な圧力が高まる中での訪問は、さまざまな憶測を呼んでいる。だがズマ側は、4月に続いて2度目となる今回の訪問の目的は、即時停戦の実現と人道支援、危機収束に必要な改革についてカダフィと意見交換することだとしている。

 フランスの通信社AFPの取材に応じた南ア大統領府の情報筋によれば、会談の焦点はカダフィの「出口戦略」だったという。一方、ズマの広報官ジジ・コドワは、こうした報道は「誤解を招く」と反論。リビア国営テレビは、アフリカ連合(AU)が提案する「和平ロードマップ」の実現について話し合われたと報じた。4月のズマとの会談後、カダフィは停戦に向けたAUのロードマップを受け入れる意向を表明した。だが反政府勢力側は、カダフィ退陣が条件に含まれていないとして停戦を拒否している。

アパルトヘイト撲滅を支持したカダフィとの絆

 南アの与党、アフリカ民族会議(ANC)の議員の間では、アパルトヘイト時代に同党を支持してくれたカダフィの人気は今も高い。反アパルトヘイトを掲げるANCは70年代以降、幹部らの軍事訓練の拠点としてリビアを利用してきた。ズマもネルソン・マンデラ元南ア大統領も、カダフィを「同志」と呼んだほどだ。

 ズマがリビアに到着した当日、リビア国営テレビは反政府軍の支配下にある港町ミスラタの西に位置するズリテンをNATO(北大西洋条約機構)軍が空爆し、11人が死亡したと伝えた。

 NATOが空爆に踏み切ったのは、反政府勢力が制圧した町を政府軍が奪還しはじめた今年3月。国連安保理の非常任理事国である南アフリカは、市民を守るためにリビアに武力行使を行う決議案に賛成した。

 だが、ズマはアフリカ諸国の指導者らと共にNATOの空爆を批判し、空爆の停止を訴えている。5月29日にはANCもNATOの攻撃を激しく非難し、「アフリカ大陸や平和を愛する世界中の人々と共に、西側諸国によるリビアへの空爆継続を糾弾する」との声明を出した。

 一方、NATOのアナス・フォー・ラスムセン事務総長は「カダフィの恐怖政治は終焉を迎えるだろう」と強気の姿勢を崩さない。「カダフィは国内外で孤立を深めている。側近たちでさえ国を離れたり、亡命したり、逃亡したりしている。カダフィも去るべき時が来た」

 5月27日には、主要国(G8)首脳会議もカダフィ退陣を求める声明を発表した。リビアの反政府勢力はこの声明について、「リビア国民の要求だけでなく国際社会の意志の現れでもある」と称賛した。

 だが、カダフィの支持者に言わせれば、退陣も亡命もありえない。リビア政府はG8の声明に対して、いかなる解決策もAUを通すべきだと反論ている。

「G8は経済を話し合う場だ。そこでの決定など我々には関係ない」と、リビアのハーレド・カイム副外相は言う。「リビアはアフリカの国だ。AUの枠組みの外からの口出しは拒否する」
 
GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハマス代表団、停戦協議でカイロへ 米・イスラエル首

ビジネス

マスク氏が訪中、テスラ自動運転機能導入へ当局者と協

ワールド

バイデン氏「6歳児と戦っている」、大統領選巡りトラ

ワールド

焦点:認知症薬レカネマブ、米で普及進まず 医師に「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中