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授賞式国連もノーベル賞より中国が大事?
中国の民主化活動家、劉暁波のノーベル平和賞授賞式に国連人権高等弁務官が不参加を表明。その裏には中国の圧力が見え隠れしている
弱腰 劉暁波を解放するよう中国を説得できなかった潘基文に批判が高まっている Na Son Nguyen-Pool-Reuters
国連人権高等弁務官(UNHCHR)がノーベル賞授賞式への出席を辞退――例年なら問題にもならないような話かもしれないが、今年は話が別だ。ノーベル平和賞の受賞者が、中国の民主化活動家で収監中の劉暁波(リウ・シアオポー)だからだ。
出席辞退を発表したUNHCHRのナビ・ピレーの広報担当によれば、授賞式が開かれる12月10日は世界人権デーでもあり、スイスのジュネーブで行われる予定の別のイベントに出なければならないという。ノーベル賞授賞式に出席するため、スイスに代理を送るつもりはないとしている。
ピレーの欠席は、潘基文(バン・キムン)国連事務総長に対し人権団体からの批判が高まるなかで発表された。今も劉暁波は収監中で、妻の劉霞(リウ・シアン)も夫のノーベル賞受賞が決まってからは自宅軟禁されている。しかし潘基文は、2人を解放するよう中国政府を説得することに失敗。受賞を祝福する声明も出していない。
劉暁波は1989年の天安門事件にも関わった民主化運動のリーダーの1人。同時に、中国の知識人や人権運動家が政治改革や人権環境の向上を求めて発表した「08憲章」の起草者の1人でもある。
アメリカ在住の中国人反体制活動家で、ノーベル賞授賞式で劉暁波の代理人を務める楊建利(ヤン・チエンリー)は、ピレーの欠席は高等弁務官としての責任の放棄だと非難した。「中国政府から直接的な圧力を受けたに違いない」
他国の高官に欠席を迫る中国
特に疑わしいのは、欠席が発表されたタイミングだ。「ノーベル平和賞が発表された後、潘基文と中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席の会談が行われた。そこで潘が劉暁波に関する話題に一切触れずに終わった直後、ピレーの欠席が発表された」と楊は指摘する(ニューヨーク・タイムズ紙はこれを潘の「恥ずべき沈黙」と呼んだ)。
一方のピレー側は、今回の欠席はあくまで世界人権デーのイベントが理由で、中国は無関係だとしている。「彼女にとっては簡単に欠席できる催しではない。今回のイベントでは、これまで無名だった人権擁護者たちに光を当てようとしている。そのために何カ月も前から準備してきた」と、ピレーの広報担当は言う。
ピレーを支持する人々に言わせれば、彼女はノーベル賞発表の前から、劉暁波に対する中国の姿勢を厳しく非難してきたという。09年に中国の裁判所が劉暁波に対して懲役11年の刑を下したとき、ピレーは中国政府を批判した。
「劉暁波に対する有罪判決と厳しすぎる量刑は、中国で言論の自由への締め付けがさらに強まることを示している」と、当時のピレーは語っている。「人権の保護・促進に対する中国の取り組みに、不吉な影を落とす非情に残念な判決だ」
Reprinted with permission from Turtle Bay, 09/12/2010.© 2010 by The Washington Post Company.