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イラン

世界に冠たる補助金経済の大きなツケ

2010年9月15日(水)18時13分
ベッキー・カッツ

 今回は、最低賃金を月額260ドルから300ドルへ14%引き上げて貧困層への打撃を緩和すると、最高労働評議会が約束している。しかし、補助金削減によって50%ものインフレが起きる可能性もあり、貧困層へのそうした支援はほとんど無意味かもしれない。

 補助金削減は国際社会による経済制裁の効果を増幅させる可能性が高いという指摘もある。先月、EU(欧州連合)はアメリカと国連に同調して、イランへの制裁強化を決議した。

 イラン政府の判断も、経済の悪化を一段と加速させる要因だ。政府は大統領選後に起きたような大規模デモを恐れ、失業者の生活の支えだった露天や蚤の市を閉鎖させた。テヘランのバザール(市場)も、商店主の所得税を70%増税するという政府の決定を受けて閉鎖を余儀なくされた。

 ある反体制派の活動家によれば、この夏、数百人の学生や商人がかつてのバザールの靴屋街に集まり、「アハマディネジャドに死を」「嘘つき政府に死を」と叫んでいたという。政権が補助金削減の舵取りを誤れば、彼らの願いが現実になるかもしれない。

GlobalPost.com特約)

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