報復合戦でガザ緊迫、次の戦争に突入か
直接対話を求める国際社会の圧力をあざ笑うかのように、イスラエルとハマスの攻撃は激しさを増す一方
暴力の連鎖 8月2日、ガザ地区にロケット弾が撃ち込まれ、ハマスの指揮官が死亡したが、イスラエルは関与を否定している Ibraheem Abu Mustafa-Reuters
8月2日朝、紅海に面するイスラエル南部の町エイラートに、エジプトからとみられる複数のロケット弾が着弾した。先週末以降、パレスチナ自治区ガザを支配するイスラム過激派組織ハマスと激しい攻防を繰り広げているイスラエルに、新たな火種が舞い込んだことになる。
イスラエルとハマスの対立は、この1年以上で最も緊迫している。7月30日、ハマスがイスラエルに迫撃砲やロケット弾を打ち込むと、その日の夜11時30分、イスラエル空軍は報復措置としてガザ地区を含む3カ所の標的に同時攻撃を仕掛けた。
2009年1月のイスラエルのガザ侵攻以降、イスラエルとハマスの報復合戦が続いているとはいえ、ガザの中心街はこれまで攻撃を免れてきた。だが今回はハマスの訓練施設に集中的な攻撃が加えられた。爆撃音が響き渡り、周辺のビルの窓ガラスは震動で震えていた。
イスラエルの戦闘機が続々とガザに向かっているという噂が広まり、ガザ住民がパニックに陥るなか、ハマスの兵士らは群集の波を必死で食い止めようとしていた。空に向かって威嚇射撃をした兵士もいる。
ガザのシファ病院も混乱を極めていた。マシンガンを持った警官や負傷者の家族、血気盛んな地元メディアでごった返す病院の玄関を、ストレッチャーを押した救急隊員が分け入っていった。
ガザ中心部への攻撃は控えてきたのに
イスラエル軍は、ガザ中心部でハマスの指揮官一人を殺害し、さらにエジプト国境沿いの町ラファの密輸トンネル地帯も攻撃した。一方、ハマスもこの日の朝、イスラエル南部の町アシュケロンの住宅街にロケット弾を撃ち込んだが、負傷者は出なかった。
昨年のガザ侵攻以降、こうした光景は決してめずらしくはない。それでもハマスはこれまで、イスラエルの大都市に高性能のロケット弾を撃ち込むことはなかった。イスラエル側も民間人の被害を減らすために、ガザ中心部への空爆を控えていた。
先週末の戦闘は、マフムード・アッバス議長率いるパレスチナ自治政府とイスラエルに対し、国際社会が直接の和平交渉の再開を強く求めた矢先に勃発した。イスラエル政府は、今回の攻撃は和平交渉を頓挫させるパレスチナ側の試みの一部だろうと主張している。
攻撃は週末を通して続いた。8月1日夜、ガザのデルバラハ難民キャンプの個人宅で大規模な爆発が勃発し、58人が負傷したという。ハマスはイスラエルの仕業だと非難したが、イスラエルは関与を否定している。
翌2日の朝、エジプトのシナイ半島からイスラエルとヨルダンに向けてロケット弾が発射され、1人が死亡。イスラエルのメディアは、週末のイスラエルのガザ襲撃への報復だと伝えている。
ハマス幹部でパレスチナ自治政府議会議長のアフメド・バハーは、7月30日の空爆で死亡したハマスの幹部イーサ・バトランの葬儀に参列し、弔辞の言葉として極めて辛辣な発言をした。
バトランは「伝説的な男だった。彼は背信と裏切りに満ちたロケット弾に殺された」。「私たちのエルサレムを守る権利を捨てるはずがない。勝利はわれわれの側にある」
一方、イスラエルの担当者は、ガザとエジプトからの攻撃を非難し、暴力に打ち勝つと宣言した。
イスラエルのメディアによれば、ベンジャミン・ネタニエフ首相は一連の戦闘を「和平プロセスを妨害したいテロ集団が、イスラエルとヨルダンの無実の民間人を標的にした犯罪的な攻撃」と語ったという。
本当に気がかりなのはイランの核疑惑
ハマスは7月30日のイスラエルへの攻撃に関与していないと主張しているが、イスラエルは以前から、ガザ地区からの攻撃はすべてガザを実効支配しているハマスの責任だと発言してきた。