対北朝鮮「太陽政策」は捨ててしまえ
3月の韓国哨戒艦沈没が北朝鮮の仕業と断定された今、韓国・李明博政権は強力な経済的制裁と情報戦に乗り出すべきだ
破壊 引き揚げられた哨戒艦「天安」の残骸(5月19日、ソウル近郊の海軍基地で) Lee Jae Won-Reuters
3月26日早朝、朝鮮半島西側の黄海を航行していた韓国海軍の哨戒艦「天安」を爆発の激しい衝撃が襲った。船体が真っ二つに裂け、船は沈没。46人の乗組員が命を奪われた。
それから2カ月近くたった5月20日、事件の原因を調べていた軍民合同調査団の最終報告書が発表された。調査団は、現場海域の海底から回収した魚雷の破片----北朝鮮海軍が用いるタイプの中国製魚雷のものだった----などを証拠として、「天安」を沈没させたのは北朝鮮の魚雷攻撃だったと断定した。
この調査結果を受けて、事態はどう展開するのか。評論家の間では、韓国が北朝鮮に対して有効な措置を講じるのは難しいという見方が多い。今まではいつもそうだった。実際、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領の選択肢は限られている。しかし、そのなかには有効な選択肢もあるかもしれない。
李は既に、北朝鮮に対して断固とした対抗措置で臨む意向を表明している。具体的には、過去2代の韓国政府が取ってきた対北朝鮮融和路線「太陽政策」を一掃したいと考えている。ランド研究所(ワシントン)の北朝鮮専門家ブルース・ベネットが言うように、「戦争行為を仕掛けてくる相手に、太陽政策などありえない」。
「太陽」にミサイルで応じた
太陽政策は、金大中(キム・デジュン)元大統領の時代に始まった。何十年にわたる北朝鮮の挑発的・攻撃的行動を改めさせるためには、南北間の緊張を和らげ、人的・経済的交流を拡大することが効果的だと、金大中は考えた。
この考えのもと、南北の政府は38度線付近のプロパガンダ用スピーカーの撤去、南北離散家族の再会、韓国から北朝鮮への大規模な投資などを推進した。金剛山観光事業と開城工業団地事業は、その代表的な成果だ。09年の時点で、開城工業団地では数十の韓国企業が工場を操業させ、およそ4万人の北朝鮮市民が雇用されている。
しばらくの間、太陽政策は効果を発揮しているように見えた。北朝鮮は以前ほど過激な言葉を振りかざさなくなったし、南北の交流も当たり前になった(南北交流など、以前はとうてい考えられないことだった)。しかし、韓国の資本とノウハウを手にしても、北朝鮮は満足できなかったようだ。緊張緩和によりそれ以上の恩恵は、実現しなかった。北朝鮮はミサイルの発射実験と核開発計画の推進をやめなかった。
08年に韓国の大統領に就任した李明博は、北朝鮮に無条件に寛大に接することをやめると表明した。すると案の定、北朝鮮は不快感をはっきり態度に示した。開城工業団地への進出企業に脅しを掛けたり、金剛山で韓国人観光客を射殺した北朝鮮兵の処罰を拒んだりした。
経済協力打ち切りで急所を突け
哨戒艦沈没事件の調査結果を受けて、李はまず国連安保理で問題を提起し、北朝鮮に対する批難、新たな制裁の導入を要請することになる。
「強力な経済的措置を取れば、北朝鮮の弱点----つまり財政を直撃できる」と、米海兵隊指揮幕僚大学の教官で元軍情報将校のブルース・ベクトルは言う。ベクトルによれば、韓国政府が開城工業団地事業や金剛山観光事業などを打ち切り、アメリカ政府が北朝鮮を国務省の「テロ支援国リスト」に復活させるべきだという(例えば金剛山観光事業は、これまでに10億ドル相当の収益を北朝鮮にもたらしてきた)。
こうした案に対しては、非現実的だという批判もある。確かに、開城工業団地には今も何百人もの韓国人従業員が働いている。もし南北の緊張がさらに高まれば、絶好の人質になるだろう。