米政府が育てた銃も撃てないど素人警察
ANCOPのメンバーは16週間の訓練を受け、少なくとも小学校3年生並みの読み書き能力を要求される。これまでのところ、マルジャでの評判はさまざまだ。
「新しい警察は組織化されていて、献身的で責任感があり、ギャングみたいだった以前の警察より役に立つ」と、地元の学校で校長を務めるアサデュラは本誌に語った。一方、地元の商店主ハジ・ノルディン・カーンの意見は逆だ。「新しい警察にもがっかりだ。以前の警察と変わりない」
警官の正体が分からない
大事なのは警官の質だ。上院外交委員会委員長のジョン・ケリー(民主党)は、「警官を増やすに当たって、忘れてならないことがある。最終目標はタリバン掃討戦に動員する準軍事的組織ではなく、良い統治を進めるための国民警察を育てることだ」と指摘する。現地の米海兵隊を指揮するラリー・ニコルソン准将はもっと単刀直入に「訓練されていない警官10人より、訓練された警官1人のほうがいい」と言う。
そもそも今のアフガニスタンに何人の警官がいるのか。正確な数は誰も知らない。現地の米軍も、採用者の履歴と配備先を追跡するデータベースの構築を始めたばかりだ。こんな状態では、名簿上に名前だけ存在する「幽霊警官」を割り出すことも難しい。警官隊に紛れ込んだタリバン兵を見分けることなど、とても無理だ。
それでも警官の増員は続き、訓練も続く。カブール郊外の射撃場で訓練を受けていたハイラ・モハンマド(24)は、読み書きはできないが「タリバンを撃つ練習ならたっぷりやってきた」と言う。
警官歴2年のうち、1年はカンダハルで、もう1年はマルジャ郊外で過ごしてきた。「戦闘で多くの友人を失った」と、彼は言う。今の望みはANCOPの一員に選ばれることだ。そうすれば今の月給180ドル(危険手当を含む)が倍になるはずだという。
しかし、それまでには射撃以外の訓練も必要だ。「ここの警察は、住民と良好な関係を築くということを知らない」と言うのは、イタリア憲兵隊のマッシモ・デイアナ中佐。「住民を尊敬し、心を通じ合えるような警官を育てたい」
国民の安全を守るのが警官の役目だとすれば、そうした資質は50メートル先の敵を撃つ技術よりもずっと大事だろう。
[2010年4月14日号掲載]