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ネタニヤフ「自由のために」の病的論理

「自由な我々」対「自由を憎むイスラム主義者」などという二分法に、アメリカはもう騙されない

2010年3月25日(木)17時33分
ケイティ・ポール

まるでチェイニー 親イスラエルのロビー団体、AIPACで演説するネタニヤフ首相(3月22日、ワシントン) Jonathan Ernst-Reuters

 アルカイダは、信教の自由などを定めた合衆国憲法修正第一条に対する抗議として橋や高層ビルや地下鉄を吹き飛ばそうとしているのではない。このことをまず認識しよう。

 政治家たちが今でも(自由を守るアメリカとそれに対抗するアルカイダという)下らない図式を効果的な対立軸だと考え、全米の視聴者に向けた演説の中で取り上げているのが不思議でならない。他に思惑があってこの話を持ち出しているというのは見え見えだ。

 アメリカを訪問したイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が22日夜、親イスラエルのロビー団体「米・イスラエル広報委員会(AIPAC)」の政策会合で行なった演説はまさにこれに当てはまる。

 入植地政策に対するアメリカ政府の批判をはねつけたネタニヤフは、和平プロセスが途絶したのはすべてパレスチナ側の責任だと言ってのけた。エルサレムに関しては一切譲歩しないと誓うとともに、未来のパレスチナ国家と周辺国との国境までイスラエル軍を駐留させる権利を主張した。

 そしてイランのマフムード・アフマディネジャド大統領のイスラエル敵視発言を引き合いに出し、第2のホロコーストの危機が迫っているかのように語った。

 だがハイライトと呼ぶべきは演説の最後の部分だった。


 イスラエルの兵士たちとアメリカの兵士たちは、両国が共有する価値観を忌み嫌う狂信的な敵と戦っている。

 こうした狂信者の目から見れば、イスラエルはアメリカでありアメリカはイスラエルだ。彼らにとって唯一の違いは、アメリカは大きくイスラエルは小さいということだ。アメリカは大悪魔でイスラエルは小悪魔なのだ。

(中略)イスラム武装勢力はイスラエルと親しいがゆえに西側を憎悪しているのではない。彼らは西側の一員であるがゆえにイスラエルを憎悪している。

 彼らにとって「自由」は中東一帯に勢力を拡大する障害であり、イスラエルは「自由」の前哨基地だ。イスラエルが対峙している敵はアメリカの敵なのだ。


不愉快きわまる二分法の議論

 黒板を爪で引っかく音と同じくらい、いやその10倍も不愉快な主張だ。政治ニュースサイトのポリティコで、ローラ・ローゼンが「チェイニー的な」世界観だと評したのも当然だ。世界を善と悪の2グループに分け、悪の陣営は世界各地の自由の前哨基地に対抗するために結託していると言うのだから。

 ここでは過去10年間に繰り広げられた「テロとの戦い」をめぐる議論を蒸し返すのではなく、ネタニヤフの言う「イスラム武装組織」の最も極端な例がアルカイダであるという前提で話を進めよう。

 96年に最高指導者ウサマ・ビンラディンが出したファトワ(宗教令)はこんなものだった。


 わがイスラム教徒の同胞たちよ(特にアラビア半島に住む者たちよ)。アメリカの製品を買うためにあなたたちが支払う金は、銃弾に姿を変えてパレスチナの同胞たちや、また明日(将来)には2つの聖地を擁する国(サウジアラビア)の息子たちに向けて使われるだろう。

 こうした製品を買うことにより、我々(イスラム教徒)はアメリカ経済を強化している。その一方で我々はさらに財産を奪われさらなる貧困に陥っているのだ。

 2つの聖地の国のイスラム教徒の同胞たちよ。わが国が世界最大のアメリカからの武器輸入国であり、アメリカにとって中東における最大の商売相手であるなど信じがたいことだ。

 パレスチナを支配し、この地のイスラム教徒を追いたて殺しているシオニストを、アメリカは同胞として支援している。

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