アメリカはもう台湾を守れない
台湾問題は地域紛争の一つにすぎない
台湾問題を煽るべきでないという問題もある。民主体制化にある台湾は無条件で支援されるべき存在であり、中国のすぐ沖合いに停泊する「空母」の役割を果たしてくれると考えるアメリカ人は多い。だが私は、米中関係において台湾問題が以前と同じほど重要な役割を果たすべきではないと思う。
台湾は小さく、アメリカにとって真の意味での戦略的利益はほとんどない(中国が本気で併合しようとすれば阻止できないし、そうなったからといって対中戦争を始めるには値しない)。
さらに、台湾への武器輸出政策は、よく考えれば問題がないとはいえない。中国がアメリカ沖に戦略的拠点を確保する狙いで、キューバに64億ドルの武器を輸出する事態を想像してみよう。アメリカはキューバ危機でまさにそうした事態を経験しており、猛烈に反発するのは目に見えている。
外交には熟慮の末に少量の偽善が混じるものだが、中台問題はその何倍も重要な課題から目を背けさせる要因になりかねない。中台問題は、中国と台湾の間で解決されるべき地域問題の一つ。地域内のトラブル以上の意味をもたない数々の国境紛争と同じだ。
「アメリカにも限界がある」時代
アメリカは世界中の民主国家をサポートすべきか。イエス。では、アメリカは民主国家を守るために戦争に乗り出すべきか。答えはノーだ。
マイノリティーの人々や小国を意地悪な近隣諸国から守ろうとする国際社会の努力をサポートすべきか。イエス。では、アメリカはそうした国々すべて(とくにハリウッドスターや巨額の資金をもつロビー集団が背後にいる国)の最後の防波堤となるべきか。答えはノーだ。
私たちは「アメリカにも限界がある」時代に足を踏み入れている。アメリカは自国の重要な戦略的利害に関わる地域や、関与することで国益にプラスになる国などごく一部の場合にのみ、積極的に関与できる。つまり、アメリカは外交政策の「大掃除」を行い、これ以上支援できない相手を見極める努力をすべきだ。厳しい判断を迫られることもあるだろうし、方針転換を公にしないほうがいいケースもあるだろう。
だが、経済環境は芳しくなく、アメリカが昔のような収支計算では立ち行かないのは事実だ。アメリカはもはや、かつてのような国ではいられない。あちこちの紛争に首を突っ込みすぎると、最終的にはアメリカの安全保障が脅かされることになる。アメリカ国民はそのことを受け入れるべきだ。