サイバー犯罪の帝国は死なず
迷惑メール問題に取り組む組織スパムハウスはカナディアン・ファーマシーを、サイバー犯罪で重要な役割を担っていると名指しで非難している。
情報筋によると、カナディアン・ファーマシーは数十のオンライン薬局から成る医薬品販売ネットワークで、各薬局による注文の転送先は明らかにロシア系のウェブサイト。消費者に届ける薬はライセンス契約なしでインドで生産されたものだとみられている。注文者の電子メールアドレスは迷惑メール送信業者に売られている可能性がある。
自称「ウクライナ・インターネット党」党首のドミトリー・ゴルボフのみるところ、世界全体の迷惑メールの70%は送信元をたどれば20〜25人から成るあるグループに行き着く。「メールアドレスのデータベースはカネになる」とゴルボフは語る。「例えば、アダルトサイトの有料会員のアドレスは100万人分で2万5000〜3万ドルになる」
RBNの「後継」組織も本家と同じく逆風にさらされている。ホスティング事業者のマッコロ社(米カリフォルニア州)は08年11月、迷惑メールとDDoS(多くのコンピューターを乗っ取って標的のサーバーに攻撃を仕掛け、サービスの遅延・停止などを引き起こす手口)の拠点になっているとしてネットから締め出された。
国境など無いのも同然
09年1月にはウクライナのウクルテレグループが、個人情報を盗むプログラムを開発したとの告発を受けて閉鎖に追い込まれた。
それでもハッカーたちはRBNが死に絶えたとの見方を受け入れようとはしない。「RBNの手口は今でも十分に通用する」という声もある。
国境はRBN流の犯罪を行う者に対して障壁の役割を果たせない。ロシアのコバリョフ議員はエストニアに対するサイバー攻撃に関して、発信元の60%がアメリカ、30%が中国でロシアは10%だと指摘した。しかしだからといって犯人がアメリカにいるとは限らない。
ハッカーにとっては世界中が自分の庭のようなものだ。彼らはウイルスなどを利用して外国人のパソコンを乗っ取り、サイバー攻撃を行わせることができる。
パソコンの防備を固めておかなければ、いつどこから犯罪の標的にされてもおかしくないということを肝に銘じるべきだろう。
[2010年1月20日号掲載]