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イランイラン「核の脅し」に効果なし
革命記念日の前後にイラン政府高官の核開発発言がエスカレートしたが、欧米諸国にとってそれほど脅威ではない
裸の王様? イラン政府は革命記念日の祝賀行事に大量の市民を動員し、その核開発能力を誇示したが(11日、テヘラン) Raheb Homavandi-Reuters
イスラム革命記念日31周年の11日、イランの指導者はテヘランの祝賀行事に多くの参加者を動員し、欧米に向けた新たな「脅し」を行った。だがオバマ政権とヨーロッパの同盟国は今のところ、その発言に拍子抜けしている。
記念行事前の数日間、イラン政府の高官たちは「敵」を非難する発言をエスカレートさせていた。イラン空軍は8日、新しい無人飛行機と開発に成功したと発表。最高指導者のアリ・ハメネイ師は空軍兵士に対し、革命記念日に「度肝を抜くやり方」で、欧米の大国の「傲慢さに一撃を食らわす」と約束した。
英BBC放送によれば、マフムード・アハマディネジャド大統領は演説の中で、イランは「核保有国」であり、まもなく濃度20%の濃縮ウランの生産を3倍にできると報告。アメリカとその同盟国に対してイランへの脅迫をやめるよう警告した。「われわれは(欧米による)差別に満ちた脅し外交に反対する......この地域を支配したいのだろうが、イラン国家はそれを許さない」
イラン核開発への「懐疑論」
ここ数日、イランの高官たちは濃度20%のウラン製造を始める意図があると話している。だが欧米諸国はアハマディネジャドの発言をさほど重大なものとは捉えていない。「『一撃』などではない」と、オバマ政権のある外交官(微妙な外交問題であることを理由に匿名を希望)は言う。
イランに詳しいヨーロッパのある高官(匿名を希望)によれば、アハマディネジャドやほかの高官の発言にも関わらず、欧米諸国はいまだにイランの濃度20%レベルのウラン製造能力に懐疑的なのだという。ましてや核兵器製造に必要な97%濃縮ができるとは考えていない。
「20%の濃度にできるかどうかすら誰もわからない」と、この高官は言う。ワシントンポスト紙は11日、イランがウラン濃縮の過程で「驚くべき挫折」を経験していて、その失敗が核開発計画の劇的な進展を目指すイランの野心に「打撃を与える可能性がある」と伝えている。
この高官はさらに、核燃料棒を国外に搬送して加工するという提案に賛成したり反対したりするイランの常軌を逸した行動が、かつては欧米による対イラン経済制裁強化に反対していたロシアを遠ざけてしまっているとも指摘する。
高官によれば、ロシアがイランの核開発を懸念している可能性もあるという。ロシア情報当局が、イラン中部コムの秘密地下核施設のような把握していない核開発情報に不意打ちを食らわされた兆候があるからだ。