最新記事

心理

女がその気になるとき

女がセックスするのはなぜか──愛か打算か快楽か。2人の心理学者の5年に及ぶ調査が明かす意外なメカニズム

2009年11月17日(火)12時07分
ジェシカ・ベネット

 ある25歳の女性に、童貞の男友達がいた。異性としての魅力は感じない相手だが、未経験であることには同情していた。だから彼女は彼の求めに応じ、セックスの手ほどきをしてやった。おかげで自信が付いて、「私って案外もてるんだって気がした」とか。

 これまで、女性がその気になるかどうかは愛情の深さで決まると考えられてきた。しかし最近の研究によれば、女性も男性と同様、快楽のためにセックスするらしい。

 女性は複雑な生き物で、体調と同じくらい気分によっても性欲を左右される。「どうすると」女性の欲望が高まるのかを研究した例はたくさんある。しかしセックスする理由を直接、女性に聞いた研究は皆無に等しかった。

 だがテキサス大学の心理学者シンディ・メストンとデービッド・バスの新著『女はなぜセックスするのか』は、女性たちの生の声を通じて、女性がセックスする動機の複雑さを浮かび上がらせることに成功した。女性の性的満足感の仕組みを解明する上では重要な一歩と言える。

 メストンとバスは、5年に及ぶ調査と1000人の女性を対象にしたオンライン・アンケートの結果を基に、女性がセックスする動機は博愛精神(男性が気の毒だった)から復讐心(恋人に仕返ししたかった)まで、さまざまだということを突き止めた。

 自分の魅力を確かめるためだという人もいれば、贈り物や家事の手伝いを引き出したいからという女性もいた。男性を逃がさないための手段だという回答は31%、家庭の「平和を守る」ためという回答は84%に上った(複数回答可)。

時にはセックスを道具に

「女性は愛ゆえ、男性は快楽ゆえにセックスすると、一般的には思われているが」と、テキサス大学オースティン校の性心理・生理研究所の所長を務めるメストンは言う。「女性の性行為を動機づける要因は複雑だ」

 確かに複雑過ぎて理解しにくいけれど、一つ一つの「動機」にはけっこう共感できる。

 ある女性は「自分に自信を付けるために(恋人以外の男性を)誘惑した。今の恋人に振られても、絶対に別の人が見つかるって思いたかったから」と証言した。

 彼への思いは冷めていたけれど「けんかしたくないから、セックスした」という答えもあった。

「セックスは、すごく便利な道具だ」と言うのは、ワシントン大学の社会学者でセックスに関する著書も多いペッパー・シュワーツ。「人は持てるものを何でも利用する。時には女もセックスを道具として使う」

 進化心理学者のバスは言う。「女性の性的動機はある種、直感的なものと考えられていた。だが調査の早い段階で、これまでの考え方と現実の間には大きな差があることが分かった。女性の心理がこの上なく複雑であることに衝撃を受けた」

 いや、男性の欲望が単純だというわけではない。07年の調査で、メストンとバスは人がセックスする理由を237項目に分類した。男性にとって1番の理由は「魅力」。「楽しい」や「好きだから」もトップ20に入った。しかし女性の場合は、興奮を駆り立てる上で主な役割を果たすのは脳だった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウクライナの長距離ミサイル使用可否、各加盟国の判断

ビジネス

英首相、日伊との次期戦闘機開発の重要性強調

ワールド

フィリピン、南シナ海サビナ礁への船舶配備を継続

ビジネス

VW、人員削減で引当金最大44億ドル計上か=ジェフ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優雅でドラマチックな瞬間に注目
  • 2
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰だこれは」「撤去しろ」と批判殺到してしまう
  • 3
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない」との研究が話題に...その仕組みとは?
  • 4
    ウィリアムとヘンリーの間に「信頼はない」...近い将…
  • 5
    バルト三国で、急速に強まるロシアの「侵攻」への警…
  • 6
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 7
    原作の「改変」が見事に成功したドラマ『SHOGUN 将軍…
  • 8
    広報戦略ミス?...霞んでしまったメーガン妃とヘンリ…
  • 9
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座…
  • 10
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 4
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 5
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 6
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 7
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 8
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 9
    キャサリン妃、化学療法終了も「まだ完全復帰はない…
  • 10
    33店舗が閉店、100店舗を割るヨーカドーの真相...い…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すればいいのか?【最新研究】
  • 4
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 5
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 6
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 7
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 8
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 9
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 10
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中