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公衆衛生「金のうんち」が途上国を救う
下痢性疾患は途上国においてはいまだに深刻な病気だ。この問題に世間の注目を集めたいと思ったら、一体どうすべきだろう? 方法は2通りある。まず、5歳未満の子供を毎年100万人以上死に至らしめる非常に深刻な病気として取り上げる方法。もう1つは、コメディー仕立てで訴える方法だ──例えば、うんちをジョークのネタにするとか。
10月15日、ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院は啓蒙を目的に「衛生学とうんちをめぐるお笑い短編アニメ映画の夕べ」と銘打った映画祭を開催した。その名も「ゴールデンうんち賞」に輝いた作品は『トイレでダンス』。2位はそのものずばりの『うんちについての映画』だった(入賞作品はウェブサイトで視聴可能。www.thegoldenpooawards.org)。
発想としては面白い。だが、多くの子供たちを死に追いやっている病気を──下痢による重度の脱水症状により、涙も流せない状態で亡くなっているのだ──笑いのネタにしていいものだろうか。
事実、こうしたやり方に抵抗を感じた人もいる。だがある程度は「論争が起きたほうがありがたい」と、同大学院で衛生学センター長を務めるバレリー・カーティスは言う。カーティスは映画祭の仕掛人の1人。少しくらい過激なことをやらないと、先進国では誰も下痢の問題に目を向けようとはしないからだ。
そもそも、このような過激な手段が必要とされるのには2つの理由がある。第1に、先進国では公衆衛生が発達していて抗生物質などの薬も容易に手に入るため、人々が途上国における下痢性疾患の恐ろしさを理解していないこと。第2に、汚い話だからという理由で、みんな下痢を(少なくとも)まじめな話題として取り上げたがらない。
今のところ、お笑い作戦はうまくいっているようだ。カーティスによると、映画祭のチケットはあっという間に完売し、英メディアの関心も非常に高かったという。
[2009年10月28日号掲載]