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イタリア集団セックス殺人が変えた人生たち
被告アマンダ・ノックスの判決がどうなろうと、彼女の周囲の人々は既に立ち直れないほどの傷を負っている
異国にて イタリアで裁判を受けているノックス(5月8日) Daniele la Monaca-Reuters
イタリアのペルージャで、イギリス人留学生メレディス・カーチャーが集団セックスを強要されたうえに惨殺されたのは07年11月1日。被告の1人として裁判を受けている米シアトル出身のアマンダ・ノックスは、劣悪な環境の刑務所に入れられている。有罪と決まったわけではないが、彼女の人生は崩壊したも同然かもしれない。
とはいえ周辺の人々も立ち直れないほどの傷を負った。カーチャーの母親は鎮静剤を常用。ジャーナリストの父親は裁判費用を捻出するため、事件についての本を執筆中だ。いずれ裁判で有罪を言い渡される者を相手取り3300万ドルの損害賠償を求める訴訟を起こしているが、裁判に勝っても娘は戻らない。
ノックスの両親は離婚。父親によると、裁判やイタリア行きの費用で莫大な借金を背負っている。父親は現在、失業中の身だ。
ノックスが当初、犯人と名指ししたパトリック・ルムンバは、経営していたバーを閉店。無実の罪で2週間投獄された彼はノックスに50万ドル以上の賠償を求めている。犯人の1人として懲役30年の有罪判決を受けたルディ・ハーマン・グエデは、犯罪現場にいたことは認めたが殺人とは無関係だと主張。控訴審は11月に始まる。
ノックスの恋人で被告でもあるラファエル・ソレチトの弁護士の2人は協力関係を解消。法医学の専門家として雇われた人の間でも意見が対立し、何人かが身を引いた。事件のブログも花盛りで、シアトルではブロガーが別のブロガーを警察に訴える事件まで起きた。
イタリアの裁判は時間がかかるが、この事件の裁判の進み具合はとりわけ遅い。ノックスとソレチトが殺人罪などで有罪になれば終身刑が宣告される。だが判決がどうなろうと、本人たちはもちろん、周囲の人々の人生にとっても事件は消せない傷になるだろう。
[2009年9月23日号掲載]