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クーデターイランとホンジュラスに学ぶ国際関係論の基礎
最近の政変で体制側と国民が流血の衝突を演じた両国には、共通点が驚くほど多い
権力奪取に抗議 クーデターで追放されたホンジュラスのマヌエル・セラヤ大統領が帰国しようとした空港で、セラヤの支持者が警察と衝突(7月5日) Edgard Garrido-Reuters
これはロケットサイエンスでも何でもなく入門レベルの国際関係論だが、誰も指摘しないのでここで書こう。
ホンジュラスとイランで今起こっていることは驚くほど共通点が多く、一考の価値がある。
どちらの国でも、既存体制内の保守勢力が実質的なクーデターを起こした。いずれの場合も、首謀者たちは法的手段と超法規的手段を駆使して自らの権力基盤を固めた。そうした行動は、テヘランでもテグシガルパ(ホンジュラスの首都)でも、体制から追われた側を支持する国民の抗議デモの引き金になった。
外国からの干渉を被害妄想的なほど嫌うのも共通だ。すると、対立する2国が軍備拡張を競い出すと際限がなくなるという「安全保障のジレンマ」の国内政治版とでもいうべき効果が働く(「主権のジレンマ」と名づけよう)。外国からの干渉に拒絶反応を示せば示すほど、国内事情に対する国際的な関心を強く引き付けるのだ。
では、両国の間の違いは何か。
■イランはホンジュラスよりはるかに強国である。
■ホンジュラスの戦略的重要性は、イランよりはるかに劣る。
同じ手が通じる相手と通じない相手
これは何を意味するのか。それは、現実主義と自由主義の論理がホンジュラスでは両立しうるのに対し、イランでは互いに対立するということだ。
もしブラジルで体制転覆が起こっても、南北アメリカ諸国で構成するOAS(米州機構)がそれを元に戻すことはまずできない。だがホンジュラスなら、多国間協力が効果を発揮するだろう。ホンジュラスが比較的小国だからこそ、OASの加盟国間でのコンセンサス作りも容易になる。多国間の制裁も、ホンジュラスには大きな圧力になる。
一方イランでは、各国の戦略的利害が対立して体制転換を促すほど大きな力にはなりえない。そもそもガソリンの禁輸以外の経済制裁が、イランの政権に目に見える影響を与えうるのかどうか甚だ心許ない。
従って他の条件が同じなら、ホンジュラスのクーデターを覆すほうが、イランに体制転換を促すよりずっと実現可能性が高い。
だが覚えておいてほしい。どんな条件も決して同じに留まらないのが世の常だ。
[米国東部時間2009年07月06日(月)03時53分更新]
Reprinted with permission from Daniel W. Drezner's blog, 8/7/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.