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米外交

親米パキスタンに反オバマの兆し

タリバンと戦わされ核計画にも干渉され、「チェンジ」への期待は裏切られた

2009年5月28日(木)18時24分
エレノア・クリフト(本誌コラムニスト)

「アメリカの戦争」 武装勢力に破壊された警察署跡を見つめる市民。自身も家を失った(5月13日、パキスタン北西辺境州のスワト地区) Reuters

 2週間ほど前にパキスタンの女性国会議員5人がワシントンを訪れたのは、アメリカにおける女性と政治の関係を知りたいからだと聞いていた。しかし本当の狙いは、バラク・オバマ大統領が前任者のパキスタン政策を引き継いだことへの落胆をマスコミに訴えることだった。これは不意打ちだった。

 だが、オバマのパキスタン政策は予想できたはずだ。オバマは大統領選の際、アフガニスタン戦争にはさらに厳しく立ち向かうと言っていた。戦闘が激化すれば、テロ組織アルカイダの避難所であり、ウサマ・ビンラディンが潜んでいるとされるパキスタン側の国境地帯に影響が出るのは当然だ。

 武装勢力タリバンが北西辺境州スワト地区を掌握し、首都イスラマバードからわずか約100キロのブネール地区に到達するなか、オバマ政権はパキスタンのアシフ・アリ・ザルダリ大統領に圧力をかけ、行動を求めた。

 5月上旬、ザルダリのワシントン訪問中に実行されたタリバン掃討作戦では、100万人以上の市民が家を追われた。女性議員たちは、多くのパキスタン国民がアメリカを非難していることを私に知らせたかったのだ。掃討作戦はアメリカの要請に従ったものであり、これはアメリカの戦争なのだ、と。

アフガンと一緒にするな

 与党パキスタン・イスラム教徒連盟に所属し、はっきりした物言いをするマービー・メムンは、「これは過激主義との戦争だ」と語った。だがメムンは、家を失った人々へのアメリカの支援が足りないと抗議した。なぜアメリカは大型ハリケーン「カトリーナ」の被災者に提供したのと同じだけの支援をしてくれないのか、と。

 ヒラリー・クリントン国務長官は5月19日、国民が携帯メールを使ってパキスタン救援活動に1回5ドルを寄付できるシステムを発表。さらにパキスタンに1億1000万ドルの援助を行うと表明した。

 メムンと話していると、リベラル系の雑誌ザ・ネーションの発行人カトリーナ・バンデン・ヒューデルを思い出す。2人とも聡明で活発で、容赦なく意見を主張する。これは褒め言葉だ。

 ヒューデルはあけすけなリベラル主義者だが、メムンの経歴はそれほど単純ではない。女性専用枠で議席を獲得したメムンは、パルベズ・ムシャラフ前大統領を支持していた。政治家一家の生まれで(父は元情報相)、積極的にテレビ出演し党の政策を擁護して出世街道を歩んでいる。

 メムンたちの抗議は果てしなく続いた。5人ともイスラム教徒だが、タリバンの支持者でも原理主義者でもないのにアメリカ人にはそう思われると不満を訴えた。

 オバマのアフガニスタン・パキスタン(アフパック)政策については、自分たちを「後進国」アフガニスタンとひとくくりにする侮辱的なものだと抗議し、カシミール問題で長年対立しているインドを別扱いにする「二重基準」に激怒していた。

 国家の地位に過敏なメムンたちは、アフガニスタンとパキスタンの大統領と一緒に写真におさまったのがクリントンだったのは外交儀礼を欠いている、と文句をつけた。クリントンは国家元首ではないというのが、その理由だ。翌日、オバマと一緒の写真が撮り直された。

「核」は全国民にとって重要

 とりわけ驚いたのは、彼女たちがパキスタンの核計画を熱烈に支持していたことだ。5人がワシントンを訪問した日、ニューヨーク・タイムズ紙は一面で、パキスタンが核開発の増強を行っており、その資金は武装勢力対策としてアメリカが供与した軍事支援金を流用した可能性があると報じた。一方でオバマ政権は、必要な場合には核兵器の流出を防ぐ案があることを改めて国民に強調してみせた。

 メムンは黒い瞳をキラキラ輝かせ、核計画は「軍隊だけではなくすべての国民にとって重要」だとして次のように語った。

「核計画はインドに対する究極の抑止力であり、この重要な兵器を流出させることはない。わが国の安全保障のために軍備を増強すると決めれば、他国にそれをやめろと言われる筋合いはない。私たちは誇り高き独立国家だ。ほかの国の指図は受けない」

 彼女が私に渡そうと準備してきた書面には、アメリカは「GPS(衛星利用測位システム)で具体的な場所を示して」ビンラディンの居所についての主張を立証すべきだと書かれていた。それができないのなら、パキスタンがビンラディンをかくまっているなどという的外れな主張はやめるべきだ、と。

 オバマ大統領は、私たちは過去よりも未来に目を向けるべきだと確信している。だがパキスタンでは、不信と誤算の遺産を捨て去ることはできない──それはアメリカも同じことではあるが。

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