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社会世界の常識メッタ斬り!
みんなが当たり前だと信じている定説にあえて反論、温暖化は地球に優しく、核の拡散は平和につながる?
抑止力? 核保有国の増加は戦争のリスクを減らすという説も(アメリカが52年に行った水爆実験) Reuters
最近、社会で当たり前とみなされてきた大前提が次々と崩れている。ここで言う「大前提」とは、重要度の低い常識的な考え方ではなく、政治的立場を問わず社会で広く認められている思考の枠組みだ。
たとえば89年以前には、ソ連がたやすく崩壊すると考えていた専門家はいなかった。01年以前は、アメリカが大規模なテロ攻撃を受けると予想する中東研究者は少数派だった。03年までは、アメリカのタカ派もフランスの左派もサダム・フセインが大量破壊兵器を隠し持っていると見ていた。
08年以前には、アメリカの金融システムの脆弱性に懸念を抱くエコノミストはゼロに等しかった。
これだけ誤りが多いと、「他にも勘違いがあるのでは?」と思ってしまう。疑ってみたくなる大前提をいくつかあげてみよう。
■核拡散は悪だ
インドやパキスタン、北朝鮮に続いて、イランも核保有国の名乗りをあげそうな今、核拡散が世界戦争や誤発射の可能性を高めると心配する人は多い。
だが政治学者ケネス・ウォルツは「核兵器の使用につながりかねない戦争を始めることを国家に躊躇させる」という意味で、核拡散は平和につながると論じた。
この意見を信じるならば核は本質的に攻撃よりも防衛用の兵器であり、国家が核の保有を望むのは理に適っている。核の保有は自重を促し、無謀な国家に責任感を持たせるとウォルツは主張する。
核拡散を止めるのは非常に難しいので、この見方が正しいことを祈りたい。
■気候温暖化が地球を滅ぼす
二酸化炭素の排出を減らさなければ文明は滅びる----物理学者フリーマン・ダイソンはこの大前提に疑問を投げかける。人間の営みが地球温暖化の元凶であることについては、ダイソンも異論がない。だが温暖化が壊滅的ダメージをもたらすという考え方には反対する。
ダイソンはザ・ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックスに「(温暖化は)暑い地域をより暑くしているというより、寒冷地を温めている」と書いた。
二酸化炭素の排出によって地球がより肥沃になり、「地球寒冷化」に歯止めがかかる可能性がある。温暖化が深刻な問題を引き起こしたら、そのときは遺伝子操作でパワーアップさせた樹木に二酸化炭素を処理させればOK(だといいのだが......)。
■中国の未来は安泰だ
天安門事件から20年、中国政府は完全に国を掌握しているようだ。中国経済は78年以降、年率9%のハイペースで成長を続け、今や超大国と呼ばれるようになった。
しかし生活水準が向上すると、政府に対する国民の不満が高まるものだ。東アジア諸国では、これが民主化の原動力となってきた。今は亡き政治学者のサミュエル・ハンチントンは、1人当たり国民所得が一定のレベルに達すると国家は政情不安に陥りやすいと指摘。中国は急速にそのレベルに近づいている。
■家は借りるより買ったほうがいい
大恐慌後のニューディール時代に米政府が住宅ローンを支援し始めて以来、家は借りるより買うものという考え方がアメリカの社会政策の柱の一つになってきた。住宅所有者のほうが地域社会を大切にする可能性が高いのは確かだ。
だが持ち家のデメリットも少なくない。まず経済的リスクが莫大なこと。それに転職したくても自由が利かない。ときには通勤時間も長くなる。住宅購入によって肥満と不幸に見舞われる恐れが増すという調査結果まである。
■長期的には債券より株がお得
ジェレミー・シーゲルの『株式投資----長期投資で成功するための完全ガイド』は資産運用のバイブル。株は1802年以来、年に平均約7%のリターンを生んできたと説く。これほど効率のいい資産運用法はないし、リスクも低いとシーゲルは主張する。他の専門家らも20〜30年に渡って所有し続けるなら、株は債券より得だとみる。
だが株が長期的に見てローリスク・ハイリターンなのは元の株価が安かったせいだろう。多くの投資家がそこに気づいた今、株はそれほどうまみのある資産運用法とは思えない。
■アメリカの自動車産業は負け組
アメリカ製の自動車は数十年前から高性能の輸入車に水をあけられてきた。だがビッグスリーの生産システムはここ数年で飛躍的に進歩し、人件費も大幅に減っている。
上海ゼネラル・モーターズ(GM)は中国の自動車産業を牽引。GMのビュイックは自動車所有者を対象にした調査で、タタ・モーターズに売却される前のフォード傘下のジャガーと並んで最も信頼できるブランドに選ばれている。フォードの2010年モデルのフュージョンは中型ハイブリッド車の最高峰だ。
ビッグスリーが抱える本当の問題は消費者が欲しがる車を作れないことより、負債や医療保険などの大きな負担にあるという意見も。それなら解決策が見つかるはずだ。
■シカゴ・カブスはワールドシリーズの勝者になれない
こればかりは定説を信じて間違いなさそうだ。