最新記事

アフリカ

原理主義との対話を

国際問題への関与路線を鮮明にしたオバマ政権、アフリカの破綻国家にも安定をもたらすことは可能か

2009年4月7日(火)16時05分
スコット・ジョンソン(アフリカ総局長)

 国家としてのソマリアは前代未聞の失敗の山を築いてきた。オバマ新政権の国連大使に起用されたスーザン・ライスは昨年、ブルッキングズ研究所のある報告書に、そう記している。

 その後も失敗の山は高くなり続け、今や130万の国内避難民が食料を求めてさまよう。暫定政府のアブドラヒ・ユスフ大統領は職をほうり出し、中南部を支配するイスラム原理主義の民兵部隊は首都モガディシオに迫る。

 この2年間で命を奪われた一般市民は約1万人。沖合では海賊行為が横行している。まともな政府が存在しない状態は、もう18年以上続いている。今のソマリアは、もう「国家」とは呼びがたい。

 だが外交手腕を発揮する場としてみれば、ソマリアはバラク・オバマ米大統領にとって絶好の舞台かもしれない。

 06年にブッシュ政権の支援を受けたエチオピア軍がソマリアに侵攻し、穏健なイスラム法廷会議を追い出した。以後、ソマリアは内戦状態に陥り、急進派に走るソマリア人が増えた。

敵との対話で軌道修正

 だがオバマは、敵とでも対話すると語って大統領に選ばれた男。イスラム原理主義の人々、とりわけ過去2年間で勢力を増大してきた武装勢力アルシャバブの若い戦闘員たちとの対話路線に転換すれば、この地に安定を取り戻せるかもしれない。

 最近になってオバマの政策実行を有利にする出来事が二つ起こっている。第一はエチオピア軍による占領の終結。第二はユスフ大統領の辞任だ。これで、穏健な人々の発言力が強まる道が開かれた。

 もちろん、対策は具体的で地道なものでなければならない。第一に、現在ほぼ恒常化している米軍C130輸送機のソマリア上空の飛行を一時中止し、武力解決の意図がないことを示す。

 第二に、アルシャバブをテロ組織のリストから暫定的に除外し、敵が「握りこぶしを開けば」米政府には手を差し伸べる用意があることを伝える。

 第三に、できるだけ多くの武装勢力を巻き込んで、対話の実現に向けた非公式の交渉ルートを開くことだ。とりわけ、ソマリアにおけるイスラム原理主義運動の父とされるシェイク・ハッサン・ダヒル・アウェイスとの接触がカギとなる。また、ライスが公聴会で触れたように、エチオピアとエリトリアの長年にわたる国境紛争を解決する必要もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中