原理主義との対話を
国際問題への関与路線を鮮明にしたオバマ政権、アフリカの破綻国家にも安定をもたらすことは可能か
国家としてのソマリアは前代未聞の失敗の山を築いてきた。オバマ新政権の国連大使に起用されたスーザン・ライスは昨年、ブルッキングズ研究所のある報告書に、そう記している。
その後も失敗の山は高くなり続け、今や130万の国内避難民が食料を求めてさまよう。暫定政府のアブドラヒ・ユスフ大統領は職をほうり出し、中南部を支配するイスラム原理主義の民兵部隊は首都モガディシオに迫る。
この2年間で命を奪われた一般市民は約1万人。沖合では海賊行為が横行している。まともな政府が存在しない状態は、もう18年以上続いている。今のソマリアは、もう「国家」とは呼びがたい。
だが外交手腕を発揮する場としてみれば、ソマリアはバラク・オバマ米大統領にとって絶好の舞台かもしれない。
06年にブッシュ政権の支援を受けたエチオピア軍がソマリアに侵攻し、穏健なイスラム法廷会議を追い出した。以後、ソマリアは内戦状態に陥り、急進派に走るソマリア人が増えた。
敵との対話で軌道修正
だがオバマは、敵とでも対話すると語って大統領に選ばれた男。イスラム原理主義の人々、とりわけ過去2年間で勢力を増大してきた武装勢力アルシャバブの若い戦闘員たちとの対話路線に転換すれば、この地に安定を取り戻せるかもしれない。
最近になってオバマの政策実行を有利にする出来事が二つ起こっている。第一はエチオピア軍による占領の終結。第二はユスフ大統領の辞任だ。これで、穏健な人々の発言力が強まる道が開かれた。
もちろん、対策は具体的で地道なものでなければならない。第一に、現在ほぼ恒常化している米軍C130輸送機のソマリア上空の飛行を一時中止し、武力解決の意図がないことを示す。
第二に、アルシャバブをテロ組織のリストから暫定的に除外し、敵が「握りこぶしを開けば」米政府には手を差し伸べる用意があることを伝える。
第三に、できるだけ多くの武装勢力を巻き込んで、対話の実現に向けた非公式の交渉ルートを開くことだ。とりわけ、ソマリアにおけるイスラム原理主義運動の父とされるシェイク・ハッサン・ダヒル・アウェイスとの接触がカギとなる。また、ライスが公聴会で触れたように、エチオピアとエリトリアの長年にわたる国境紛争を解決する必要もある。