核の脅威を止める21世紀の抑止力
核テロ防止のための新たな世界同盟を
両国の主導で「核テロ防止世界同盟」を樹立すべきだ。この組織の使命は核兵器や核物質がテロリストの手に渡らないよう、物理的・技術的・外交的に可能なあらゆる行動を取り、核テロのリスクを最小限に抑えることだ。
同盟への加盟には核兵器・核物質のセキュリティー管理を確実に行うことが条件となる。各国はテロリストをはねのけるために自国の核兵器・核物質を完璧な「防護壁」で守ると約束する必要がある。その手段は透明性が高く、他の加盟国を安心させられるものでなければならない。
加えて、テロリストの手に渡った核兵器・核物質の出所を特定できるよう、加盟国は自国の核物質のサンプルを世界規模のデータベースに提出する義務を負う。万一、核兵器・核物質が盗まれても、その国が核のセキュリティー管理に関する要件を満たし、十分な「防護壁」を講じていた場合はあまり厳しい処分を受けずにすむ。
加盟を渋る国は、テロリストに核爆弾を提供する可能性のある国のリストに自動的に加えられることになる。加盟国でも、核物質がテロリストの手に渡ると知りながらそれを許したことがわかれば、賠償請求や武力制裁など厳しい罰を受けることになるだろう。
ブッシュ前米大統領は、核テロを「アメリカの国土安全保障に対する最も深刻な脅威」と正しく認識していたが、一貫した対策を打ち出すことはなかった。貨物の検査に10億ドル以上の資金をつぎ込む一方、核鑑識にはわずか数千万ドルしか投じなかった。
バラク・オバマ現大統領は核テロを「最も差し迫った脅威」とみなし、対策を講じると公約している。オバマ政権の急務は20世紀の核抑止の概念を21世紀の脅威に合うよう改めること。実際、オバマはそれに取り組んでいるようだ。ジョー・バイデン副大統領も以前、核テロに加担するおそれのある国を対象とする「新しい抑止策」の必要性を訴えたことがある。
前述の世界同盟ができれば、パキスタン、イランだけでなくロシア、アメリカも同じ核テロ防止ルールに従うことになるが、その実現には時間がかかる。一方、核兵器をテロリストに売るという暴挙に出ないよう北朝鮮に歯止めをかけるべきタイミングは今だ。
米政府はすぐに行動を起こし、北朝鮮製の核兵器については北朝鮮が完全に責任を負わなければならないと金正日にクギを刺す必要がある。その際、アメリカはロシアや中国に協力を求めるべきだ。
核拡散に関して明確な説明責任を負っていることを金正日が理解すれば、自分がおかれている立場もわかるだろう――アメリカやその同盟国が北朝鮮製の核兵器の攻撃を受ければ、全面報復を受けることになる、と。
(筆者は『核テロ――今ここにある恐怖のシナリオ』の著者)
[2009年3月25日号掲載]