「戦うバービー」ではないドラマ『ブラザーズ・サン』のリアル...「こんな女たちが見たかった!」
Putting Women Front and Center
本作の女たちは皆、何か欲しいものがある。家でおとなしくしていたり、「私と仕事のどちらを取るの」と恋人に迫ったりはしない。
登場人物が復讐や権力のために行動するのは目新しいことではないかもしれないが、アクションのジャンルではそれは男のやることで、女たちもというのは斬新だ。
例えば第1話の中盤では、お下げ髪で上機嫌だった麻薬ディーラーのメイが、ちょっとしたきっかけで一変してすごむ(アリス・ヒューキンが怪演)。メイはあっという間に死んでしまうが、代わりに双子のジューン(ヒューキンの1人2役)がメイの敵を討つべく兄弟に力を貸す。
トライアドのボスであるビッグ・サン(ジョニー・コウ)に忠誠を誓う女殺し屋シン(ジェニー・ヤン)は、『ザ・ソプラノズ』のポーリー・ウォルナッツのようにバカが付くほど組織に忠実だ。
それでも真に迫っているのは人間味を感じさせるから。彼女は「戦うバービー」ではない。長い年月を経て人を殺しても何も感じなくなった悲哀をにじませ、登場シーンは短いながらもヤンの好演が光る。
恋愛らしきものにさえ、アクションものの典型よりも興味深いストーリーと深みがある。
無垢なブルースの恋の相手かと思われたグレース(マディソン・フー)は、実はトライアド壊滅をたくらんでいる。恋人の復讐のためでもなければ、権力を手にするためでもない。家族が組織によって人身売買されたから、という説得力のある動機だ。