最新記事

デンマーク

デンマーク前女王・マルグレーテ2世と「馬蹄のブローチ」...感動的な「父娘の物語」とは?

2024年01月27日(土)09時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
マルグレーテ2世

KN-shutterstock

<生まれながらにしての王位継承者ではなかった、マルグレーテ2世。退位の署名時に襟元につけていたブローチを贈ったのは誰か? そしてその意味について>

1月14日、デンマークのマルグレーテ2世女王が退位し、息子のフレデリック10世に王位を譲った。互いをリリベットとデイジーと呼び合った「親友」エリザベス女王の逝去後は唯一の女王となり、ヨーロッパで最も長い在位期間を誇ったマルグレーテ2世。

その52年在位の最後の日を赤紫色のコートドレスで臨んだ女王だが、襟元にちらりと見えた馬蹄型のブローチが女王の決意と歴史を物語っていたのだ。

【拡大写真】マルグレーテ2世の馬蹄型のブローチ を見る

2024-01-14T173128Z_51515643_RC2PH5A2AGDG_RTRMADP_3_DENMARK-ROYALS2-20240126.jpg

新国王フレデリック10世が見守る中、襟元に馬蹄型のブローチを着用して退位の署名をしたマルグレーテ2世 Ritzau Scanpix/Mads Claus Rasmussen via REUTERS


ヨーロッパでは魔除けと幸運の意味がある「馬蹄(ホースシュー)」のブローチ。マルグレーテ2世が身に着けていたのは、父・フレデリック9世から1953年に贈られたものだ。当時まだ13歳だった王女がなぜ、この小さなルビーが施された馬蹄型のブローチを国王である父から贈られたのか?

それは1953年に法改正が行われたことで女性にも王位継承権が与えられ、王位継承順位に変更があったからだ。生まれながらにして王位継承者ではなかったマルグレーテ王女(当時)は、この時に13歳で王太子となった。その祝いに父である国王から贈られたのが、その馬蹄型のブローチである。

それから約20年後の1972年1月15日、デンマークは初の女王を迎えた歴史的な日となった。しかし、その前日14日に父である国王を亡くしてばかりの新女王は黒い喪服に、このブローチを身に着けていた。最愛の父を悼みながら、初の女王としての決意の即位であった。

【写真】馬蹄型のブローチを喪服に着用して即位したマルグレーテ2世 を見る

そして今回の退位に際して、その馬蹄型のブローチを再び着用したマルグレーテ2世。それは女王としての務めを十分にやり遂げたことを父に報告する意味もあったのであろう。52年間の大きな責務から解放された女王が退位の署名後に部屋を出る後ろ姿は凛々しくも寂し気で、涙を誘うシーンとなった。

【写真】退位の署名後に部屋を去ったマルグレーテ2世の後ろ姿 を見る

「最期まで女王であり続ける」とたびたび発言してきたマルグレーテ2世の突然の退位発表は世界を驚かせた。しかし、元女王の動向はいまだメディアに注目され続けるなど、新国王フレデリック10世も母の人気ぶりに打ち勝つのはそう簡単ではなさそうだ。

ちなみにフレデリック10世国王と孫のクリスチャン王太子(18歳)が海外に出るなど国事に関わる公務に就けない時は、マルグレーテ2世は国王代理を務めることが法律上は可能だという。その時にまた、馬蹄型のブローチを着用する姿を見られるかもしれない。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4

ビジネス

ECB、12月にも利下げ余地 段階的な緩和必要=キ

ワールド

イスラエルとヒズボラ、激しい応戦継続 米の停戦交渉

ワールド

ロシア、中距離弾道ミサイル発射と米当局者 ウクライ
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 2

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 3

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 4

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が出産後初めて公の場へ...…

  • 4

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 5

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること