最新記事

映画

「見て見ぬふりをされた...」米映画界で搾取される女性たちの「声なき声」を描いた映画『アシスタント』の新しい視点

Telling Her Story

2023年06月22日(木)15時12分
ニューズウィーク編集部
ジュリア・ガーナー

告発をしたジェーンに絶え間ないハラスメントが ©2019 LUMINARY PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

<セクハラを「相談したのに無視された」女性の視点から全編作り上げた、秀作について>

映画界の性的ハラスメントに切り込んだキティ・グリーン監督の新作『アシスタント』がアメリカで公開されたのは、2020年1月31日。くしくも、かつての大物映画プロデューサー、ハービー・ワインスティーンの裁判が本格化し始めたときだった。

この映画のきっかけとなったのは、ワインスティーンの性的暴行に対する数々の告発を元に17年に巻き起こった#MeToo運動。多くの女性が身を置いている、心をむしばむような労働環境を真正面から取り上げた。

「そうしたテーマの映画がこんなに早く作られるなんて思っていなかった」と、主人公のジェーンを演じたジュリア・ガーナーは全米公開時に本誌に語った。

ジェーンは大学卒業後、映画プロデューサーを目指して映画製作会社に就職する。アシスタントとして地味な仕事を続けるうちに、上司の行動に疑問を抱き始める。上司は映画の中で顔を出さないが、ワインスティーンをモデルにしているのは明らかだ。

ジェーンは社内で目撃したハラスメントや女性蔑視を、人事担当に報告する。だが人事は、耳を貸さない。

「作品のためにインタビューした多くの女性たちは、人事に相談したのに無視されたと言っていた」と、グリーンは語る。女性へのハラスメントが常態化していることに「ショックを受けた」と、彼女は言う。

「みんな同じような経験をしていた。女性たちの尊厳がこんなにも踏みにじられているなんて、信じ難かった」

本作で特筆すべきなのは、全編が女性の視点を通して描かれていること。これはグリーンが狙った演出だ。

「女性が真ん中にいる映画を作りたかった。特に、企業内ヒエラルキーの最下層にいて、非力な女性を。悪い男たちは、もう映画の中で十分に描かれてきたから」

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    TikTokのフィットネス動画が女性の健康を害している.…

  • 5

    「なぜ隠さなければならないのか?」...リリー=ロー…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「なぜ隠さなければならないのか?」...リリー=ロー…

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    「ポリコレ」ディズニーに猛反発...保守派が制作する…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    レザーパンツで「女性特有の感染症リスク」が増加...…

  • 3

    「日本のハイジ」を通しスイスという国が受容されて…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「なぜ隠さなければならないのか?」...リリー=ロー…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs

特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs

2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う