最新記事

映画

ダイアナの苦悩はこの人にしか演じられないと思わせる映画『スペンサー』主役の好演

Kristen Stewart Plays Diana

2022年10月14日(金)17時53分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)

だがポートマンが常に冷静だったジャクリーン・ケネディを型どおり再現しているのに対し、スチュワート演じるダイアナは危うげで不完全だがリアルだ。スチュワートは超有名人を演じるこつを確実に押さえている。完璧な上流階級のアクセント、猫背気味のところや子供っぽい歩き方、相手を上目遣いで見る癖。それでも物まねの域を超えているのはダイアナの混乱した内面を掘り下げているからだ。

本作でのダイアナの自滅的な選択の多くは、計算ずくのささやかな反抗だ。女王夫妻や王室の人々を混乱させ、当惑させ、いら立たせようとする。スタイリストが選んだ服を着替え、夜中に城内の食品貯蔵室をあさり、「独りにして。マスターベーションしたいの」と言ってメイドを追い払う。スチュワートの素晴らしい演技(本作を成立させている唯一かつ十分すぎる理由)がピークに達する瞬間だ。

彼女もダイアナ同様、10年間、批判的な世間の目のないところで自分は何者かを探り続けてきた。ただし悲運のプリンセスと違って、乗り越える道を見つけたのだ。

©2022 The Slate Group

SPENCER
スペンサー ダイアナの決意
監督/パブロ・ラライン
主演/クリステン・スチュワート
日本公開は10月14日

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米関税適用除外を申し入れ、言質は取れず 議論継続=

ビジネス

世界の石油供給拡大ペース、需要を上回っている=ガン

ビジネス

ヘッジファンドの個別株ポジション解消、7日は過去2

ビジネス

日経平均は1000円超安に下げ幅拡大、一時3万60
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「日本のハイジ」を通しスイスという国が受容されて…

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    レザーパンツで「女性特有の感染症リスク」が増加...…

  • 5

    「なぜ隠さなければならないのか?」...リリー=ロー…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    レザーパンツで「女性特有の感染症リスク」が増加...…

  • 3

    「ポリコレ」ディズニーに猛反発...保守派が制作する…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    レザーパンツで「女性特有の感染症リスク」が増加...…

  • 3

    「ポリコレ」ディズニーに猛反発...保守派が制作する…

  • 4

    「指を入れるのが好きじゃない」...フランス発ベスト…

  • 5

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33

特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33

2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た