ダイアナの苦悩はこの人にしか演じられないと思わせる映画『スペンサー』主役の好演
Kristen Stewart Plays Diana
スチュワートも若い頃から脚光を浴びることに戸惑いを感じてきた NEONーSLATE
<ダイアナ元妃の苦悩をリアルに描く話題作『スペンサー』。映画界で同じ悩みを抱えてきた主演クリステン・スチュワートの迫真の演技が光る>
パブロ・ラライン監督の伝記映画『スペンサー ダイアナの決意』は、名声に戸惑い、自らの美貌に縛られ、セレブの檻の中でプライバシーや自由を感じられずに悩む、情緒不安定な若い女性の内面に観客を引き込む。そう、これはダイアナ元妃の悲劇の寓話だ。夫チャールズとの結婚と王室との関係が破綻していた彼女が、1991年に闘いを決意する瞬間を捉えている。
だが同時に、主演のクリステン・スチュワートの女優人生の寓話でもある。彼女も若くしてメディアのあら探しの標的になり、早咲きのスターゆえのジレンマに悩まされた。
昨年10月のインタビューでスチュワートは50余りの出演作のうち「何から何まで素晴らしい作品」と言えるのは5作だけだと語った。唯一具体的に挙げたのは『アクトレス~女たちの舞台~』と『パーソナル・ショッパー』(共にフランスのオリビエ・アサヤス監督によるアートシアター系の作品で、スチュワートは前者でアメリカ人では初めてセザール賞助演女優賞を受賞)。『スペンサー』のPR目的のインタビューなのに本作は挙げなかった。
自分ばかりか自分の出演作まで、時には映画界全体も卑しめる態度は、彼女のメディア上のイメージやメディアとの関係を特徴づけてきた。
例外は『トワイライト』シリーズだ。2008年にスタートした同シリーズでスチュワートはバンパイアと恋に落ちる高校生ベラを演じ、一躍スターの座に。15年のインタビューではファンを引き付けてやまないシリーズ全5作品の魅力を愛情を込めて振り返っている。「作品の意図は変に純粋。『トワイライト』を悪く言いたい気持ちは分かるけど、私にはいつまでも誇らしく思えるところがある」
同感だ。メロドラマに浸れるし、2人の映画スターの誕生を目撃するのは純粋にわくわくする。スチュワートとバンパイア役のロバート・パティンソンは理想のカップル。均整のとれた顔の骨格ばかりか、実力にそぐわないつまらない役を大真面目で熱演しているところもそっくりだ。
子役時代から順調に積み重ねたキャリア
暗いベラのイメージが強すぎて忘れがちだが、スチュワートの映画界でのキャリアは長い。両親は共に映画関係者で、9歳で母親が関わっていた映画に一瞬だけ登場。10歳になる頃には初めてちゃんとした役をもらい、その翌年にはデービッド・フィンチャー監督の『パニック・ルーム』でジョディ・フォスターの娘役に抜擢された。