最新記事

BOOKS

全米女性の心を潤す、大ベストセラー「恋愛小説家」コリーン・フーバーって誰?

The Unlikely Author

2022年09月02日(金)09時40分
ローラ・ミラー(コラムニスト)
コリーン・フーバー

PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. IMAGES VIA SIMON & SCHUSTER

<大衆小説が持つべき要素がてんこ盛りすぎで「トラウマポルノ」との批判も。しかし、自費出版から、TikTokユーザーの心をがっちりつかむ型破りな手法でベストセラーを量産する「ビジネスモデル」は、出版革命を起こすのか>

ビキニ姿でビーチに寝そべる女性たち。日焼けにいそしみながら彼女たちが読み入っているのは、現代小説家コリーン・フーバーの本だ。

動画投稿アプリTikTok(ティックトック)で広く拡散したこんな光景の動画が物語るように、この夏はフーバーの夏だった。いや、その前にはフーバーの春があったし、さらにその前にはフーバーの冬と秋もあった。

実際、この1年以上にわたり、パブリッシャーズ・ウイークリー誌の週間ベストセラーリストには、フーバーの小説が3作品、多いときは6作品もランクインしていた。ニューヨーク・タイムズ紙の最新ベストセラーリストでも、フィクションのトップ5のうち3冊がフーバーの小説だ。

ちなみに一番人気の『世界の終わり、愛のはじまり』(邦訳・二見書房)は、最新刊ですらない。6年も前に刊行された小説なのだ。10月に刊行予定の続編(ひょっとすると前日譚かも)『イット・スターツ・ウィズ・アス』も、たちまちベストセラーになるのは間違いないだろう。

42歳のフーバーが、これほどヒット作を連発しているのは、TikTokやインスタグラムなどソーシャルメディアのおかげといわれる。

これらのプラットフォームには本好きな人のコミュニティーがあって、メンバーは冒頭のような動画や、フーバーの全24作品をランク付けした動画などを作っては投稿する。本の面白さだけでなく、こうした動画の出来も作品のヒットに貢献するわけだ。

フーバー自身、2012年のデビュー作『そして、きみが教えてくれたこと』(邦訳・ヴィレッジブックス)などの作品を自費出版して、有力書評ブロガーに無料配布して取り上げてもらうことで大手出版社との契約にこぎ着けるという、伝統的な作家とは異なる方法で成功を収めてきた。

テキサス州在住で、結婚して子供がいて、ソーシャルワーカーだった彼女が、出版ビジネスに革命をもたらす(かもしれない)手法を駆使してベストセラー作家になったことは、伝統的な新聞や雑誌でも大いに話題になっている。

ロマンスは必須の要素

もちろんどんなテクノロジーを駆使しても、つまらない小説だったら、ここまで話題にはならないだろう。その点、TikTokには、フーバーの小説を読んですすり泣いたり、ショックの叫び声を上げたり、本を胸に押し当ててうっとりするユーザーの映像がたっぷりある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

2月完全失業率は2.4%に改善、有効求人倍率1.2

ワールド

豪3月住宅価格は過去最高、4年ぶり利下げ受け=コア

ビジネス

アーム設計のデータセンター用CPU、年末にシェア5

ビジネス

米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    「ポリコレ」ディズニーに猛反発...保守派が制作する…

  • 5

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    「なぜ隠さなければならないのか?」...リリー=ロー…

  • 5

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    レザーパンツで「女性特有の感染症リスク」が増加...…

  • 3

    「日本のハイジ」を通しスイスという国が受容されて…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「なぜ隠さなければならないのか?」...リリー=ロー…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:引きこもるアメリカ

特集:引きこもるアメリカ

2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?