全米女性の心を潤す、大ベストセラー「恋愛小説家」コリーン・フーバーって誰?
The Unlikely Author
意外にもフーバーの作品は、多くのベストセラー作家のそれよりもバラエティーに富んでいる。ヤングアダルト小説もあれば、恋愛コメディー小説やゴシックサスペンス小説もある。
ドメスティックバイオレンス(DV)や児童性的虐待といった難しい問題を扱った小説もあれば、70%はセックスシーンではないかと思わせるセクシー小説もある。
ファンは、こうした作品全てを熱烈に支持するわけではないが、フーバーの書いたものなら、自分にとって未知の領域でも読んでみようと思うことが多いようだ。どの作品にもロマンスの要素が含まれていることも、物語の世界に入りやすくしているようだ(注・この先ネタバレあり)。
特に2015年の作品『ノーベンバー9』(未邦訳)の女性主人公は、ファンが共感しやすそうだ。彼女は気になっている男性に、「本に書かれるような」キスとはどんなものか説明し、カップルが互いに一目ぼれするような恋物語は好きではないと語る。
トラウマポルノと批判も
一方、『世界の終わり、愛のはじまり』では、主人公リリーをめぐる三角関係が描かれる。このうちの1人であるライルは、一見したところ完璧な男性だ。ハンサムな医者でセックスは最高、それでいて普段は物腰が柔らかい。
ところが2人が真剣な付き合いを始めたとき、本当の問題が明らかになる。ライルは激高すると暴力を振るう癖があったのだ。リリーは、かつて母親が父親から暴力を受けるのを見ていたこともあり、苦渋の決断を下す。
「私たちの娘が心から愛する男性に傷つけられたら、あなたは娘に何て言う?」と、リリーはライルに問い掛ける。それに対するライルの答えを含め、読者が号泣すること間違いなしのシーンだ。
主要登場人物がトラウマを抱えている、というのはフーバーがよく使う手だ。子供のときに虐待を受けたとか、大やけどの痕があるとか、子供や元恋人が事故死したとか、親に愛されない子供時代を送ったなど理由はさまざまだ。
さらにフーバーの小説には、相手も心の傷を抱えていることを知って、一段と引かれ合うカップルがよく登場する(これには「トラウマポルノ」だと批判する声もある)。