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「日本の皆さんのおかげ」──駐日ウクライナ大使館のツイートで生き延びた友人

2022年06月09日(木)15時43分
小林薫(本誌記者)
工房

一人で切り盛りしているというタチアナさんの工房。安全上の理由から場所が特定できる写真を送ることが禁止されているため、この1枚のみ提供された 提供:本人

<一人のウクライナ人女性を支援していたつもりが、実はもっと多くの人を助けていたことが判明。復興まで見守ってほしいというお願いと、日本人へ感謝のメール>

ロシアのウクライナ侵攻から約1カ月半が経過した4月上旬、駐日ウクライナ大使館員のツイートを見つけた。ウクライナ人クリエイターの商品を購入することで経済支援ができるという内容だった。そこで紹介されていたタチアナさんのサイトには、ロシアによるウクライナ侵攻についてと家族を一人で養わなくてはならないという内容が英語で書かれていた。

一人しか支援できないことに罪悪感はあったが、何もしないよりは一人でも助けることができればと思い、日本円で約1万円のハンドメイドの革バッグをすぐに注文した。この状況なので商品が到着しないことも想定内であったし、何よりも郵送するためにタチアナさんが外出して爆撃に遭うことを一番心配した。

追跡履歴を見ると、タチアナさんは私が注文した翌日4月6日に郵便局(Ukrposhta)から商品を発送してくれたが、9日にウクライナ国内で税関検査を受けたあと、荷物はずっと止まっていた。しかし、翌月のクレジットカードの明細では、送料を含めて1万4734円が引き落とされていたので、無事に彼女にお金は届いているのだとほっとした。

しばらくタチアナさんと商品のことを忘れていた6月1日、突然、ウクライナから小包が届いた。驚いて、「無事ですか? 先ほど受け取りました。本当に美しくて素敵です! あとでサイトにレビューを書きますね。あなたと家族の安全を願っています」とすぐにメールをした。その後、レビューの書き方に関する事務的なやりとりを何度かしていたところ、キーウで爆撃があったというニュースを見て、「大丈夫ですか?」とすぐにメールを書いた。

すると、すぐに彼女は驚くほど長いメールを書いて送ってくれたのだ。そこには駐日ウクライナ大使館員のツイートを読んで、私以外にもたくさんの日本人がタチアナさんの作品を購入していたこと、そのお金で自分の家族以外にも三家族を養うことができたこと、また、キーウ近郊のボロディアンカという街に支援物資を送ることができたことも綴られていた。そして日本の皆さんに個人的にお礼を伝えたいということが最後に書かれていた。

これは自分の心の中だけにとどめておくべきなのか、それとも「顧客」という立場を超えてもいいのだろうかと数時間考え込んだ。しかし、ここで何もしないことは一生後悔すると思い、そこで初めて自分が記者であることを告げ、メールを公表してもいいかと聞いた。すると、「私に何か手伝えることがあれば是非!」とすぐに快諾してくれた。以下、タチアナさんとのメールのやりとりを掲載する。

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