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全身重度の大やけどで見た目問題に苦しんだ女性は、どうして「自分は美しい」と思うようになったのか

2022年02月24日(木)16時15分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

やけどの跡は、恋愛の障害にはならない。ビデオにはマファルダさんの恋人ニコラスさんも出演し、次のように言う。「初めて彼女を見た時、綺麗だという言葉以外見つからなかったです。ものすごく魅力的で、オープンな人で驚きました」。ニコラスさんがやけどのことを尋ねないので、聞く勇気がないからではと思い、マファルダさんの方から彼に聞いたほどだった。

ニコラスさんいわく「僕にとって、彼女が僕に対してオープンでいてくれることが大事だったので、ひょっとして話すのが嫌だったのならそれでいいと思っていたんです」とのこと。ニコラスさんはマファルダさんのおかげで新しいことをたくさん学び、経験したという。

現在、マファルダさんは看護専門職に就く勉強をしつつ、チューリヒ小児病院の専門家たちが運営する先述のDie Hautstigma-Initiativeの報道担当者・アンバサダーとしてテレビや雑誌に出ている。自分の経験を知ってもらい、彼女と同じような境遇の人たちにとってお手本となる人物になりたいという。

外見で差別を受ける子供が多い

ビデオレポートの最後には、いじめられている子どもや親たちに向けたサイトや電話番号が表示される。マファルダさんがいじめに遭った経験は特徴的な外見をもつ人たちだけでなく、そうした問題をもたない人たちにとっても役立つだろう。

最近のオンライン調査「子どもの権利の研究 スイス及びリヒテンシュタイン2021」*によると、両国では、ほかの生徒から32%が身体的暴力を受け、43%が心理的暴力を受けていることが明らかになった。また差別に関しては41%が少なくとも1回は経験しており、その理由は外見(21.4%)、出身地(8.2%)、年齢(7.5%)、性別(7%)などとなっている。

個人的な話だが、筆者は幼少時に怪我をして顔に傷を負い、ずっと顔にコンプレックスを抱えていた。もう気にしなくていいと思えるようになったのは、20歳のときだった。メイクをしっかりするようになり、それでも傷が目立つような気もしたが、傷に気づく人がいても自分はこのままでいいと思ったら吹っ切れた。いじめられたことはなかったが、外見でいじめや差別を受けた人の心は傷つく。ヨーロッパでも日本でもいじめや差別をなくすのは容易ではないが、なんとか変わっていってほしいと切に願う。

「子どもの権利の研究 スイス及びリヒテンシュタイン2021」
スイス及びリヒテンシュタイン・ユニセフと東スイス応用科学大学の共同。2019年11月~翌年6月実施。9~17歳が参加。スイスからは1428人、リヒテンシュタインからは287人、計1715人が回答。


s-iwasawa01.jpg[執筆者]


岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com

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