最新記事

コンプレックス

全身重度の大やけどで見た目問題に苦しんだ女性は、どうして「自分は美しい」と思うようになったのか

2022年02月24日(木)16時15分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

入院は計11カ月に及んだ。リハビリをしているときも、麻酔をしないと痛みをこらえられないほどだった。これまでに受けた手術は30回に及んだ。やけどの跡は顔だけでなく、全身にある。

いじめに悩み、自殺を考えたことも

退院後、外出時にやけどの跡のために多くの視線を浴びるのは耐え難いことだった。しかし、小学校に戻ると、マファルダさんはクラスメイトたちが自分のことを受け入れてくれたと感じた。学校側が事故のことをほかの児童や親に伝えてくれたからだ(皮膚疾患の子どもや若者とその親族をサポートするスイスの団体Die Hautstigma-Initiativeのマファルダさんの紹介

それから1年ほど経った小4のとき、マファルダさんは小さい町から都会のチューリヒに引っ越した。そして、新しい小学校に通い始めたとたん「焦げたニワトリ」だと言われ始め、2年間ずっといじめられた(唾を吐かれたり身体的暴力も受けたという)。当時、マファルダさんは強い薬による副作用で体がむくんでいたことから、「太っている」とも言われてさらに傷つき、自分のことを醜いと感じていたという。

「当時は毎日泣いていました。泣くことで嫌な気持ちを解消して、また、いじめに立ち向かおうと思えたのです」とビデオで告白している。とはいえ、いじめが耐え難く、自殺を考えたこともあった。遺書も書いた。しかし、自己啓発本なども含め様々なことに助けられ、自殺は踏みとどまった。

彼女はカウンセラーの言葉にも励まされた。「毎日5分間、鏡を見て自分のことをほめる」という行為をすすめられて実践し、「そうだ、私は可愛いんだ」と自分に言い聞かせていった。ひどいいじめは、小さい町へ再び引っ越したことで終わった。新しい学校では、みんながマファルダさんをありのまま認めてくれた。

自分は綺麗だと初めて自覚~恋愛も楽しむ

外見のコンプレックスを完全に克服したのは、18歳の誕生日を迎えて間もなくのことだったそうだ。着飾ってはいたが、自分のことを綺麗だとは思えなかった。ところが暑い夏の日に鏡に映った自分を見て、自分は本当はすごく美しいのだと気づいて涙が止まらなかったという。これ以上自分を苦しめるのはやめて、ずっと隠してきた体の皮膚移植の傷を見せようと決心した。(スイスの週刊誌『シュヴァイツァー・イルストリエルテ』)

いま、マファルダさんは「やけどの跡がなかったら自分はどんな外見だろうか」という想像はまったくしない。いまの自分があること、自分は誰なのかということに感謝しているし、そのことを誇りに思っている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    「男性に守られるだけのヒロイン像」は絶滅?...韓ド…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 4

    韓国のキム・ジヨンに共感する、日本の佐藤裕子たち..…

  • 5

    「ショート丈」流行ファッションが腰痛の原因に...医…

  • 1

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 2

    タンポンに有害物質が含まれている...鉛やヒ素を研究…

  • 3

    「ショート丈」流行ファッションが腰痛の原因に...医…

  • 4

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 5

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ヨルダン皇太子一家の「グリーティングカード流出」…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 4

    キャサリン妃の「結婚前からの大変身」が話題に...「…

  • 5

    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプ新政権ガイド

特集:トランプ新政権ガイド

2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?