最新記事

中国

離婚するのは本当に難しいから結婚は慎重に...中国「離婚クーリングオフ制度」導入から1年

2022年02月19日(土)16時15分
佐藤太郎

「離婚クーリングオフ制度」を経験した女性は、結婚する前に慎重に検討することを勧める(写真はイメージ)Cunaplus_M.Faba-iStock

<地方政府がクーリングオフ制度が「非常にうまくいっている」と主張する一方で、渦中に離婚を体験した人は「離婚するのは本当に本当に難しい」と言う>

離婚率の上昇に歯止めが効かない中国で、離婚を求める夫婦に、手続きが完了するまでに30日間待つことを義務付ける「離婚クーリングオフ制度」が導入されてから1年経った。

この制度は離婚を希望する者に対し、30日間の冷却期間を設けるというもので、衝動的に離婚する前に熟慮するよう求めるもので、夫婦合意の上での協議離婚の場合、「申請→受理→30日の冷却期間→審査(これも30日間)→成立」という流れだ。

法律として制定されてから1年を経て、その効果の程が各自治体から報告された。中国の各省は、離婚率が著しく低くなったことを報告し、新しい規則による冷却期間が功を奏したとしている。

まず、西部重慶市の民政局は1月初め、「離婚クーリングオフ制度」の30日間の待機期間中、別居中だった夫婦5万組以上が離婚をやめ、2021年の離婚件数は前年より44%減った。東部山東省青島市の離婚件数は前年比33%減の1万6000件。過去10年間で最少だったという。

南西部の貴州省貴陽市では、「離婚を希望していた夫婦のおよそ4分の1がクーリングオフ期間中に冷却を終えた」と、貴陽日報が報じた。

中国民政部によると、全国の離婚件数は、2021年第1~3四半期で約158万件。前年同期より100万件以上減少したそうだ。

導入前に離婚しなかったことを後悔

国が大々的に「離婚クーリングオフ制度」の成功をアピールする一方で、国民は冷ややかな視線を向けている。政府は、「離婚クーリングオフ制度」の目的を社会の安定を高めることだと説明するが、多くの国民はこの規則を「婚姻の自由」を干渉するものとみなしている。

香港英字紙サウス・チャイナ・モーニングポストの取材に応じた、上海在住の李雪さんは最近夫と離婚したばかりだ。彼女は「離婚クーリングオフ制度」が導入される以前、すでに結婚生活は破綻しており、導入前に離婚しなかったことを後悔しているという。「経験上、離婚するのは本当に本当に難しいので、独身の人たちは結婚する前に慎重に検討するようお勧めします」

「離婚クーリングオフ制度」では、離婚したい者がすでに別居していたとしても、配偶者が一緒に申請に行かないと、スタートラインにも立てない。顔も見たくない相手と窓口を訪ねるのはストレスだし、DVなどの問題を抱えている夫婦なら危険もはらんでいる。さらに、離婚の申請後30日以内に一方的にキャンセルできてしまうため、片方の配偶者が申請を取り消すと、また一から出直す必要がある。

「裁判になれば大変です。初めて離婚を申請した場合、認められないことが多い。まず2回目以降でないと申請自体を認めてもらえないことが多いです」と李雪さんは付け加えた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 2

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 3

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 4

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 5

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 3

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 4

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が出産後初めて公の場へ...…

  • 4

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 5

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること