夫婦で在宅勤務なのに「家事や育児は女性の仕事」 他国の例を踏まえた最適解は?
スウェーデンには充実した福祉制度があり、共働き家庭が子育てしやすい環境が整っています。育児休暇は両親合わせて480日取得可能で、先進国で最長日数を誇ります。育休期間の390日までは給与の80%が支給されるので、収入が極端に減る心配なく長期間の育児休暇を取ることができます。
育児休暇に加えて、子どもの病気で親が仕事を休む場合も、政府が給与の80%を保障してくれます。父親もこの制度を利用して子どもを看病することが当たり前になっています。急に仕事を休むことになっても上司や同僚からは「お互いさま」と理解が得られる職場環境が実現できています。
スウェーデンの高福祉を支えているのは言うまでもなく高税率です。スウェーデン国民は世界でも最も高いレベルの税金を福祉や社会保障のために喜んで納めてきました。税金が高くても、それに見合ったサービスが受けられる、目に見えるメリットが享受できれば国民の合意は得られるのです。
ところが近年、スウェーデンの「平等社会」にかげりが見え始めています。難民保護政策による移民の急増が、犯罪の増加や国家財政の圧迫を招いており、国民の間で不満と不安が高まってきています。
OECDのレポートよると、スウェーデンは他の先進国に比べて早いペースで貧富の格差が拡大していることがわかっており、スウェーデンの国家理念である「平等社会」に揺らぎが生じてきています。
家族みんなが幸せになれる理想のかたちは?
家事も育児も「完全個人責任」のアメリカ。高税率・高福祉による「平等社会」を目指すスウェーデン。二つの極端な例をご紹介しました。
これら以外にも、夫婦が外でバリバリ働き、祖父母が子どもの面倒を見る中国の「祖父母による孫育てスタイル」。子どもを母親同伴で海外に留学させ、父親が国内に一人残りお金を稼ぐ韓国の「ギロギアッパ(雁父さん)」など、近隣アジア諸国においても、社会の変化に伴い家族のかたちが変わってきています。
日本も夫婦共働きが当たり前になり、リモートワークが一般化しつつあります。働く環境が変化する中で、仕事、家事、育児を家族の構成員がどう分担していくのか、家族全員が幸せになれる「理想の家族のかたち」について、パートナーと話をすることから始めてみてはいかがでしょうか。
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[執筆者]
船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。