「ポップスの到達点」とまで評されるビヨンセ、今も究極の歌姫に君臨し続ける
The Key to Beyoncé’s Success
彼女は文化の女神のパワーと華やかさで、自分の音楽とビジョンに息を吹き込む。リアーナやレディー・ガガ、あるいはマドンナだって、ビヨンセのように2時間半も豊かな声量で歌い続け、15センチヒールで高難度のダンスを踊り続けることはできまい。
そして、無神論者や不可知論者、同性愛者、耽美主義者にとって、女神とは世界中の数百万の観客の前で、最上級の女らしさを醸し出すポーズをシルエットで見せる豊満な歌姫以外にあり得ない。
批評家や学者、声楽の専門家は、圧倒的なエンターテイナーとしてのビヨンセに匹敵する「ポップス界の巨人」として5人の名を挙げることが多い。そのうち4人は故人で、唯一生きているティナ・ターナーも80歳を過ぎている。ちなみに故人の4人はサミー・デービスJrとジェームズ・ブラウン、プリンス、そしてマイケル・ジャクソンだ。
「マイケルの正統な後継者」
「ビヨンセはある意味、マイケル・ジャクソンの正統な継承者だ」と言うのは、ニューヨーク大学録音音楽研究所のジェイソン・キング所長。マイケルはステージで放つ独特なオーラ、ダンス、ボーカル、視覚効果の融合で、まさしく「キング・オブ・ポップ」となった。とはいえ、彼の栄光には虐待疑惑が影を落としている。
だが「父親との虐待的な関係がなければ、マイケル・ジャクソンはあのようなパフォーマーにならなかっただろう」と、バークリー音楽院のリンダ・バリロ准教授(声楽)は言う。「ビヨンセの状況はそれほど極端ではなかったと思うが、スタミナや不屈の精神、意欲、そして勤勉さを獲得する上で、彼女の父親が何らかの役割を果たしたのは確かだ」
ビヨンセの父マシュー・ノウルズが時に、マイケルの父ジョー・ジャクソンと比較されるのは、ある意味自然なことかもしれない。
しかし厳し過ぎる暴君だったジョー・ジャクソンと違って、ノウルズはむしろ「鬼軍曹」のタイプだった。彼は愛娘を含む「デスティニーズ・チャイルド」のメンバーを早朝にたたき起こし、歌いながら公園を延々と走らせるなどの訓練を課していたという。
だから「私は音楽業界の誰よりも努力してきた」というビヨンセの言葉は、単なる思い上がりではなく事実なのだろう。彼女は2013年にGQ誌で、ショーの前には「アスリート並みの準備をする」と語っていた。「試合前のアスリートは相手だけでなく、自分自身のプレーもじっくり分析する。私も同じ」